最近気になる局面 & 将棋ルーム告知
最近見た将棋の中から、気になった局面をいくつか拾ってみました。
個人的な関心から仕掛け周辺が多いです。終盤にはあまり興味がなくすいません...orz
考えてみれば最近は盤駒を使って棋譜を並べる機会も少なくなってしまったので、モバイル中継や書籍に頼りっぱなしです。感謝感謝です。
(1)西尾ー塚田(竜王戦)
雁木対矢倉の新旧対抗型になりました。
ゆっくりした展開になれば▲68金右と締まる手が大きく先手ペースですが...
ここで塚田先生の△45歩!が攻め120%の仕掛け。
以下▲45同歩に△55歩▲47銀として力づくで中央の制空権を取り戻します。
後手番なのにすごいですね。
上図から▲45同歩△55歩▲47銀△75歩
▲46銀△54銀▲24歩△同歩▲75歩(次図)と進んだとき...
△65歩(次図)▲76銀△56歩と仕掛けられては、形勢はともかく後手の言い分が通った形。
実戦もこれ以降、攻め倒した後手が勝ちました。
(2)日浦ー伊藤沙(棋聖戦)
後手得意の矢倉から、先手の飛車先交換に△23銀と上がった形。僅かな形の違いで、ここから思わぬ強襲が成立しました。
▲23同飛成△同金▲83銀!
この銀は取るしかなく...
△83同飛▲61角△82飛▲43角成まで一本道です。
実戦はここで△51銀から粘りに出たものの、以下短手数で先手勝ちになりました。
まさに、「一段金に飛捨てあり」の格言通りでしたね。
上図でひと目は△22飛で受けきりなのですが、▲24歩があったのが後手の誤算。
以下(1)△33金には▲33同馬△同桂▲23金△52飛▲33金(下図)で一手一手です。後手は金駒がなく、ゆっくりした展開になっても受けが利きません。
▲24歩に(2)△24同金も▲21馬△同飛▲33桂△32玉▲21桂成△同玉▲52飛で寄り形です。ここで△31銀の受けには▲14歩が入るのが先手の主張で、貴重な一歩が先手で手に入ってはもう攻めが切れません。
将棋は少しの違いが大違いですね。違いがわかる将棋指しになりたかったらこれを読みましょう笑(好きあらば棋書紹介) 級位者~初段程度向けの次の一手本です。
(3)高橋ー野月(棋王戦)
ひじょうに懐かしい矢倉・二枚銀対抗型。80年代によく指されました。
いま先手が▲35歩と仕掛けたところで、実戦は△35同銀▲同銀△同歩▲55歩△36銀▲46銀(下図)と進んで、以降も粘り気のある戦いが続きました。
実戦の進行以外には▲35歩に△同歩が自然な対応。以下▲45銀と銀をぶつけてきたときに...
△33角が知らないとちょっと指せない受け。
▲34銀には△24角と柳に風。以下▲25歩△13角▲15歩でまずそうですが、△36歩の切り返しが用意されています。
これを▲同飛と取れば、△35銀、▲14歩なら△35角▲36飛△18歩▲同香△17歩という手段があり、読み始めたらきりがありません。この変化だと先手の58金が68金に変わっているとさらに後手に有利な形ですね。
参考として、次の将棋を挙げておきます。
(4)加藤(一)ー田丸(名将戦、1984年)
上図以下、△75歩▲同歩△31角▲74歩△86歩▲同歩
△同飛▲87歩△84飛▲35歩△75銀▲同銀△同角(下図)
後手番で飛車先を交換していないにもかかわらずここから仕掛けます。
現代的なスピード感です(ただし結果は先手勝ち)。
矢倉二枚銀にはロマンがありますね。
図から▲35歩△同歩▲55歩は仕掛けの手順として覚えておきましょう。
ということで、結構ながいこと書いてしまいました。
棋譜を紹介する際には、なるべく図と図のあいだの手順を短くするのが理想と思ってやっています。というのも、個人的には囲碁のテレビ棋戦やYoutubeでの棋譜解説を見ているときが一番効率よく棋譜を覚えられると感じているのです。
1手ごとに局面を目の前にして考えられるのがいいのでしょう。
棋譜並べの際にはやはり、一手一手丁寧に並べることをおすすめします。そして、将棋チャンネルを始めとする動画教材、そして将棋教室の講座も活用していきましょう。
最後に宣伝。6月4日と11日(月)のよる6時からに東京・四ツ谷のねこまどにてまた将棋ルームを主催することになりました。最初に席料を払ったあとは、対戦をしてもよし、棋譜並べをしてもよし、Abema将棋チャンネルをみててもよしのまったりルームになります。
皆さまお誘い合わせの上お気軽にお越しください。
6/4(月)に将棋ルームやるから来てね☆
— みずたま (@go_tom_89) May 29, 2018
いちど席料さえ払ってしまえばずっとぼーっとしてても棋譜並べしてても指導受けてもチェスや囲碁やっててもいいよ https://t.co/GnIspysCKN
将棋メモの残し方
今日は午後の予定がすべて吹っ飛んでくれたので笑、ふと思い立って将棋会館に行きました。月末だったので最新の将棋世界が売っていたり、前々から欲しかったグッズを買ったりと充実しました。個人的には、扇子入れ(紺)のデザインが可愛くなっていてほしくなりました。
2階の道場は平日昼間ということもあり、さすがに空いていましたね。帰り際には何人かの棋士とエンカウントしました笑
写真の右下に写っているのは将棋連盟が最近発行した「ウォッチ&プレイ将棋ガイド」という薄い冊子(他意はない)で1冊100円で買えます。さくらはな。さんの描くゆるふわな4コマ漫画が楽しくて、すいすい読めました。
この冊子は買い方がすこし面倒で、事前に3階にある普及部に電話をして在庫を確認した上で取りに行く必要があります。いちおう将棋会館の3階以上は無断では入れませんので、事前の連絡は怠りなくよろしくおねがいします。私が電話したときは、「あーはい、では取り置いておきますねーブチ」だったので、どこに行けばいいかわからず閉口しました笑
販売部をうろうろと見ていると、相変わらず図面用紙や棋譜用紙が販売されていて懐かしくなりました。昨今の将棋ブームのおかげで書籍販売の棚がおそろしくガタガタになっていて少し心配してしまいましたが笑、図面用紙は大丈夫そうです。
詰将棋作家の若島正さんは、作品の創作に際して盤駒は使わず、移動中などに思いついた図面を図面用紙に書き込んで、修正しては新しく図面を書くという推敲方法を取られているようです。アナログ派には欠かせないアイテムですね。100枚入って324円なのでお手頃。うちにも数冊あります。
最近は山口(絵)先生の提唱に代表される将棋ノートが指す将さんのあいだで定着しているようで、素晴らしいの一言に尽きます。やろうと思えば100円の方眼ノートでもさくっと作れるのが良いですよね。将棋の図面以外にも今日は詰将棋を何問解いた!とかも書くみたいです(自分が書いていないからわからない)。
個人的には、将棋ノートと言えば菅井ノートという勝手ないめーじがイメージがあります。ゴキゲン中飛車対策の超速▲37銀への対抗策、いわゆる菅井流などは昔の研究ノートを読み返す中で発掘されたという逸話もありますね。
(というか菅井流っていくつあるんだ...)
皆さんは日頃の将棋の研究や思いつき・発見をどのような形で残していますか。
PC上に残している方も多いでしょう。私が思う私に向いたベストな方法はブログやツイッターでつぶやくという方式でしょうか。私の身の回りだとShogipicや局面図ジェネレーターを使う方が多いです。
ツイッターなどに局面図を投げておくと、必要なレスポンスが得られる上に人の役に立つ可能性があります。もちろん秘密の研究にしたい方には向きませんが。
(そもそも私は序盤研究をまったく重視しないですすいません笑)
Wordファイルなど、棋書のようなレイアウトで残して、いずれ本当に棋書にするという方法もありますね。
【↓こういうやつ。結構簡単にできる。】
この道での先達の一人はタップダイスさんでしょう。Kindleで読める電子書籍「棋書作成マニュアル」はこの方法を取る人にとっては間違いなく大きな案内役です。
↓リンク
それから、先日紹介したShogi Playgroundも便利なツールです。ご存知の通り私も愛用しています。自分用に書くにも公開用にするにしても、見た目が良いです。
図面管理の基本手筋としては、局面図作成というソフトがあります(フリー)。これはKifu for Windowsのような基本ソフトから出力した図面データを書籍のような使い勝手の良い画像に変換してくれる便利なソフト。スクショよりかはエレガントでしょう。これでも書籍っぽい出来栄えにはできます(上記「棋書作成マニュアル」も参考になる)。
他には、棋譜の管理ならかなり古いソフトですが「棋泉 for Win」があります(フリーソフト)。10年以上そのままのかたちで存在するこのソフトが現在でもプロの棋譜管理のだとしたら、ちょっと驚いてしまいますが...(来たれプログラマ)。まあそもそもKIF形式がどうかという疑問もあるらしいですがそのことはまた...
そういえば上記の「ウォッチ&プレイガイド」では、図面は柿木将棋からスクショしていましたね。ソフト自体使いやすくて素晴らしいです!ただ冊子にスクショはダサい...。
はい、ということでいろいろとソフトやグッズを紹介しました。
みなさんも自分だけの将棋ノートを作って快適な将棋ライフ&上達ハイウェーを楽しんでください!
※使い方がわからなかったら記事などでフォローするのでお気軽にリプやコメント下さい。それと各種アプリは商的利用に関しては各自お調べください。
最近買った本
最近ブログを読んでいただいた方から「読んだよー」とか「あの記事よかったね」なんて行ってもらえることがぽつぽつあって嬉しいです。
記事自体にコメントがつくこともありますし、はてなブログ特有のスター★がつくこともあってさらにやる気が倍増します!ありがとうございます!あとはアクセス数も増えて、ツイッター以外からのアクセスも出てくるようになったのが意外とうれしい。
今日は最近買った本を紹介します。週末に神保町に行く機会があったので、ちょっぴり収穫がありました。
これはとある街の寂れた古本屋で400円で売ってたので、当時角換わりの中盤戦について考えていたこともあり購入。家には1冊保管用があります笑
図面を一つ紹介すると、こんな感じ(27ページ)。「先攻を考えるとき」というテーマで、ここからの仕掛けの読みを著者自ら紹介しています。
問題図だけ見るとむずかしいですが、ふつうに読み物として読んでしまえばこんなに面白い本は他にありませんよ。
ここからは神保町で買った本。詰将棋の大家・田中至さんによる一般向け詰将棋本。
絶版で値上がりしていた本に600円という破格がつけられているのを見たときは、久々に興奮しました笑
ちなみに前回の興奮は、同じ書店で見つけた七條兼三『将棋墨酔』(4,000円)でした。古書店巡りの醍醐味とも言えるこの感動、一体死ぬまでにあと何度味わうことができるでしょうか...。
次も詰将棋本です。これだけでわかったらすごい...。
中を開けると...
桑原辰雄『妙義図式』(3,500円)です。以前から買おう買おうとは思っていたのを引きずっており、今回ツイッターでふと思い出したのを機会に思い切って購入しました。
110ページの詰将棋本としてはちょっと高いですが、それに負けない効果があると思います。というのもこの著者は実戦形の名手なのです...
『妙義図式』第2番
答えはまたいつか。
なんか「今度やります」の積み残しが増えてるな…笑
あとはいつもどおり囲碁の本を少々。
2,3百円だから許してね♪
手筋大好き
最後におまけとして、Twitterに投げるとなぜかいつも人気の #棋書をみつける シリーズを付けときます笑
参考 前の記事
https://mizutama-shogi.hatenablog.com/entry/2018/05/01/224335
ではまた次回ー
棋書紹介(5月その2)
英語で台形って言えますか?
trapezoidって言うらしいです。
なんか世の中、知らないことって多いですね。
今日は5月の新刊をまた紹介します。
前回の分はこれ。
★★★★★
ついに出ました。江戸時代(厳密にはもう少し前?)からの角換わりの名局を100局も収録し、そのうちの重要対局30局に谷川先生自らが解説を付した、永久保存版の名著。谷川先生が一時代を築く中で生まれた自戦も何局も選ばれています。
副読本は『谷川浩司の戦いの絶対感覚』(河出書房新社)でしょう。
・北島忠雄『すぐに使える!端の絶対手筋』(マイナビ)
★★★★☆
端攻めに関するエトセトラをわかりやすくまとめた好著。類書に安用寺先生の『全戦型対応!将棋・端の攻め方、受け方』という本があるのですが、北島先生のほうがよりスッキリ読みやすく、初・中級者に優しい印象。
本書はプロの実戦例における端の手筋を取り上げる章があるのがかなり好印象。また、端攻めから生じやすい詰み形(3手詰など)も数多く紹介されています。
・白石勇一『やさしく語る 碁の大局観』(マイナビ)
★★★★☆
囲碁の置碁(ハンデ戦)を打つ際の考え方を通じて、囲碁において必要な大局観という道標を示す本。とくに白番(上手)での考え方(黒石の集団を割くなど)を説いた本は珍しく、素晴らしい試みと思います。上手は初期配置で不利なので実戦的な手段に訴える必要がありますからね。そうした不利から勝つための考え方は大事で、(将棋でも)軽視できません。
将棋でも逆転術の本は貴重ですが、出されているものは例外なく名著です。
・楊嘉源『どんどん得する厚み活用法』(日本囲碁連盟)
★★★☆☆
アマの棋譜を手直しするレクチャーシリーズの第4巻。厚みを囲わずいかに利用するかを教える10局。
私自身ここで囲碁の棋書を紹介するのは、もちろん囲碁自体が楽しいからというのもあるのですが、基本的には「将棋の棋書にない方法論・記述方法を吸収する」意味で取り上げています。身の回りのすべてがヒントです。
エッセイでは、石田和雄先生の半生を記した新書も読みました。
これはみなさん読まれていると思うのであえての紹介はしません。
高見叡王おめでとうございます。
購入はしていないですが以下の詰将棋本も入門者にはおすすめです(本が誰かから私の手元にくればレビューします笑)。
6月は藤井聡太全局集や詰パラ本、上野先生の定跡本、suimonさんの定跡書、各種エッセイに森けい二先生の次の一手本、そして囲碁年鑑と本当に目白押しです。
5月の棋書は5月のうちに消化してしましましょう!
「これにてよし」からそのさきへ
今日知人に聞かれた局面から。
(先後逆ですが下が先手として扱います)
三間飛車に対する45歩仕掛け。
ここで45同歩はないか?との質問でした。
ここは42飛なら普通ですが、定跡に疑問を持つのはいいことです。
以下33角成で角交換をして同桂。
さらに24歩同歩同飛と飛車先を破って居飛車だんぜんよしです。
ここで22歩と受けられても、23歩や21角で居飛車の優位は動きません。
ただし今回聞かれたのはこのあと。
たとえば44角などと打たれると、理論的には先手が良くても実際にはごちゃごちゃされて逆転負けするというもの。この意見は私自身ひじょうによくわかります。
この「これにてよしから勝ちきれない」問題には2つの対処法が考えられます。
まずは、諦める方法。自分にはこの定跡本に書いてある指し方はまだ早いからと、早々に定跡手順を諦めて終盤力重視のトレーニングをするのがひとつ。これは結局、詰将棋をやることになると思うのですが、底力がつくという意味で非常に効果的です。少なくとも付け焼き刃の知識で知ったかぶりをするよりかは潔いです。
もう一つは、中盤からの勝ち方を学ぶ方法。
中盤に優位を築いた方には、2つの勝ちパターンがあります。まずは短距離走抜き去り方式。
将棋はざっくり言って、どちらの攻め駒が先に相手玉に届くかというゲームと見られるので、中盤のリードを保ったまま一気にゴールまで駆け抜ける勝ち方があります。これは横歩取りのようなさわやかな斬り合いの将棋に多い印象。
もう一つは、真綿でじわじわ方式。つまり、少しのリードを保ったまま他の箇所で戦いを起こさずに収めることで、徐々に最初のリードが顕在化するだろうという考え方です。大抵はそこで相手が暴れてくるので、その無理攻めを討ち取っていきます。言い換えれば打たせて取るピッチング。
今回の例だと、23歩のあとの、23同歩同飛成44角という変化が質問者さんの気にかかったようです。
ここで、相手の角に99角成とさせる手はないでしょう。相手の無理攻めを摘み取るスタイルならば66角同角同歩として対抗し、これで当分振り飛車から手がありません。
44角に単に66歩もあります。
質問者さんはそこで55歩同歩同角が気になったようです。
↓
たしかに55に角を出られると、紛れる可能性が高くなります。戦いの場所が増えてしまっているからです。
ということで66歩55歩には47銀をおすすめしておきました。
以下56歩には同銀右で、手順に遊び駒が使えてうはうはです。実戦的にはここで振り飛車も46歩などと暴れてくるのでしょうが、それを討ち取れれば楽に勝てます。
それが面倒なら最初から44角に66角とがっちり受けましょう。
話が長くなりました。
勝ち方の話、これにてよしからの考え方はまた詳述します。
とりあえず参考図書。形勢判断は必須技術です。深浦本はまさにこの質問者さんのニーズを具体化した、当時画期的な本でした。
手筋で楽しく上達
最近、手筋の勉強にハマっています。
といっても囲碁の手筋です。もちろん将棋の上達に通じるところはとても大きいです。
まずは、勉強といってもそんな大それたものではなく、電車に乗ったときなど、スマホの代わりに文庫サイズの手筋本をとりだすだけなんですけどね。
手筋って、前後の手順的な文脈なくサクサク解けて、それでいて詰将棋(詰碁)ほどたくさん手を読まなくていいので軽快で楽しいです。
そういえば、手筋とは、一手の働きを最大化するような駒運び(石運び)のことを指します。囲碁も将棋も互いに交互に手を指しあい、いかに見合い(両狙い)を作って相手を上回るかというゲームなので、1手の効率が非常に大切なわけです(その点、ハンデ戦としての2手指しは有効と思います)。
ちなみに手元の事典では、手筋とは「その形における部分的なセオリー(後略)」とあります(『日本将棋用語事典』東京堂書店)。
例えば下図の局面で、後手の棒銀が協力で8筋が受からないように見えます。
ここで▲88歩△87歩▲79銀という一連の手筋を知っていることが重要。
知った上で更にレベルが上がると、(対局で実際に目にする前に)読みの中でこの変化は大丈夫と見切ることができます。
そして、知っていると知らないとでは大違い(自分で考えて生み出すのは不可能あるいはそうとう非生産的)という意味で、手筋は語学学習で言う単語暗記のようなものといえそうです。知識をジャブジャブ注入して、たくさん引き出しを作っておきましょう。
英単語で言うと、語源で学ぶ学習法が一時期はやりました(いまも主流の一つでしょう)。contemporary=con(一緒)+tempo(時間)+rary(語尾)みたいなやつです。
手筋にもそれが言えて、それはとくに囲碁の定石に当てはまる感覚があります。
つまり単語(定石)の成り立ちを理解すると知識が保持されやすく成るあの感じです。もちろん将棋の定跡も同じですよ。すべての理論の根幹はsubordinateの具体手順でしかありえません。
例えば上記の本に出ている例から。
白△は定石ハズレで、左右の黒石が連絡(つながる)できます。
全然関係ないですが、私は囲碁の手筋の中でワタリ(連絡)が一番好きです。
図のようになったときに、最初にトンだ白石が働いていません(つまり黒に切られる)。
将棋で言えば、「部分的な定跡」と呼ばれる手順がこれに当たるでしょう。
次図は一手損角換わりで発見された新手筋。
ここで▲36歩と控えて打つのがいまとなっては常識の一手。次に▲35銀からの銀交換を狙います。
代えて▲35歩では△43銀としなやかに引かれてのれんに腕押しというところでした。定跡には常に具体手順による裏付けがあるのです。定跡の成り立ちを知りましょう。
手筋を覚える本をいくつか紹介します。
杉本昌隆『振り飛車の絶対手筋105』
同『相振り戦の絶対手筋105』
神崎健二『格言・用語で覚える居飛車の基本手筋』
武者野勝巳『手筋の達人1・2』
また、囲いに関する手筋本や、藤倉勇樹先生の本もおすすめです(以上マイナビ)。
強い人は『将棋は歩から』を読み直しましょう。新発見があることを約束します。
『将棋は歩から』上中下 加藤治郎名誉九段
— みずたま (@go_tom_89) September 23, 2017
歩の手筋集。歩の用法を18に分け、プロの棋譜も交えつつひたすら明瞭に解説。学究的な文章が魅力。垂れ歩、ダンスの歩などの用語は本書に由来。3巻を全て理解し、実戦で使いこなせれば四段は堅い。推薦文に菊池寛。昭和を代表する棋書。#今日の棋書 pic.twitter.com/VImx2KMycI
最後に、手筋は最終的には「考えればわかる」ではなく「見た瞬間にわかる」になるのが理想です。初段レベルの棋書や問題でも侮らず、繰り返し取り組みましょう。
【二枚落ち】次の一手100本ノック
「プロに二枚落ちで勝てれば初段。」
将棋を指すすべての級位者にとって、わかりやすくていい目標になっています。
また、ある程度は仕掛けのときに読みを入れなければうまくいかないという点で、二枚落ちには将棋のエッセンスが詰まっている感じがします。
私自身、二枚落ちは上手と下手のどちらも経験がありますが、明らかな必勝法がある6枚落ちや8枚落ちと比べて、やっていて楽しいということもあります。
今回は二枚落ちで上手に挑む方々向けに、二枚落ちに頻出する局面を棋書からピックアップしてみました(頻出過ぎて記事内で重複もw)。読みの材料を増やすのにご活用ください。また、今回の記事には正解は載せないのですが、最後にブックガイドもつけておきますので、答えが気になった方は書籍をご参照ください。
【第1問】湯川
上手の△66歩は紛れの常とう手段。この湯川本から△66歩をひたすら解説してある部分を集めました。
【第2問】湯川
単発の△66歩ポンもあれば...。
【第3問】湯川
△75金からの△66歩も頻出。
【第4問】湯川
△31銀に▲34歩の定跡はマイナーですが出てくることもあります。
【第5問】湯川
▲56歩を突かない形。
【第6問】湯川
▲46銀の瞬間の△66歩
【第7問】湯川
来る日も来る日も△66歩。
【第8問】先崎 p157
第5問と同じ形。つまり重要。
【第9問】先崎 p206
(△64銀まで)
△66歩を▲同歩と取った後も自信を持って指せますか?
【第9問】先崎 p207
(△74金まで)
▲44歩が下手の狙い筋です。読み筋は?
【第10問】先崎 p208
(△75同金まで)
こわそうでこわくない、すこしこわい△75金
【第11問】所司 p90
▲44歩の瞬間の△55歩はひとつの呼吸です。
【第12問】所司 p108
単に△55歩。これは前にも出てきましたね...。
【第13問】所司 p112
銀をどこから使うか。
【第14問】所司 p116
見たことあるんだかないんだか...。
【第15問】所司2 p17
上手△85金型は知っておくと便利な紛れ形 。
【第16問】所司2 p29
何もないところから飛んでくる△66歩。気持ちの整理をつけて...。
【第17問】大山 p140
合わせの歩の手筋にどう対抗するか。
【第18問】大山 p162
△34歩も有名な紛れの手。
問題は以上となります。お疲れ様でした。
【使用上の注意】
書籍に書いてあることは、あくまで著者が正しいと考えていることです。大事なのは、まず先人の考えを学んだうえで自分なりに解釈し、あたらしい指し方や考え方を生み出す(先人の説を認めるのも含めて)ことです。これを日本の芸術・武道の用語で守破離(しゅはり)と呼びます。
【参考文献】
湯川=湯川博士『定跡なんかフッとばせ―駒落ち必勝法』(マイナビ、2003年)
所司=所司和晴『【完全版】駒落ち定跡』(日本将棋連盟、2010年)
所司2=所司和晴『二枚落ち裏定跡』(日本将棋連盟、2005年)
『【決定版】駒落ち定跡』所司和晴
— みずたま (@go_tom_89) March 20, 2018
8枚落ちから香落ちまで8種の駒落ちの王道定跡を網羅したいわば現代の『将棋大観』。所司七段の丁寧な語り口そのままの解説で初心者も安心。駒落ちは定跡通りに進むことが多く勉強になる。幼き日の藤井六段が将棋教室で丸暗記して上達したエピソードも。#今日の棋書 pic.twitter.com/KVAq9u717q
『駒落ちのはなし』先崎学
— みずたま (@go_tom_89) September 20, 2017
将棋世界の連載を書籍化したもの。8枚落ちから2枚落ちまでの主要定跡を、上手の実戦心理の機微に触れつつ流れるような先崎節で解説する。定跡書としても読み物としても味わい深い。
巻末には木村九段との角落ち特別対局も収録。全棋力対応の名著。#今日の棋書 pic.twitter.com/RlRq6Z3eP8
【その他のブックリスト】
二枚落ちから角落ちまでの王道定跡と実戦心理を必要十分な量だけ記述。
阿久津主税『駒落ちの教科書 八枚~二枚落ち編』(マイナビ、2014年)
高橋道雄『棒銀と中飛車で駒落ちを勝て!』(NHK出版、2011年)
平手の中終盤を説いた本だが、オトナの二枚落ち攻略の2項目がたいへん秀逸。
新書サイズながら二枚落ち、角落ち、飛車落ちのエッセンスをさらっとまとめる。
言わずと知れた駒落ちの古典。今日の目で見直す訓練の材料としても。
※近日マイナビからプレミアムブックスとして復刊される予定。マニア向け。
『棒銀と中飛車で駒落ちを勝て!』高橋道雄
— みずたま (@go_tom_89) December 2, 2017
駒落ちは上達のために有用だが、駒落ち用の定跡を覚えるのが大変そうというイメージも根強い。それならば平手でも使える戦法を使えばいい、というのが本書の発想。六枚落ちから角落ちまでを網羅し、垂れ歩や継ぎ歩といった部分手筋も身につく。#今日の棋書 pic.twitter.com/jH4R1As3kW
『駒落ち戦法』板谷進
— みずたま (@go_tom_89) October 2, 2017
駒落ち研究の大家として知られる名棋士による二枚落ち、飛香落ち、飛車落ち、角落ちの定跡書。決して分量は多くないが、各戦法のメインラインと細かな変化を丁寧に押さえているのが好印象。二枚落ちは主要3戦法を収録。しかしやはり飛車落ちが本書の醍醐味だ。#今日の棋書 pic.twitter.com/B5KwxouPki
『二枚落ち裏定跡』所司和晴
— みずたま (@go_tom_89) October 25, 2017
二枚落ちといえば二歩突っ切りと銀多伝が有名で、どちらかを使えれば下手はまず間違いない。本書はそうした表定跡に手を焼く上手のための絶好の手引き書で、上記に加え多伝殺し、△5五歩止めなど6型を収録。『【決定版】駒落ち定跡』の副読本としても。#今日の棋書 pic.twitter.com/oD7to4SRsc