みずたま将棋ブログ

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【王道を往く天衣無縫】佐藤康光将棋著作集

佐藤康光九段の将棋が王道を往く正統派の将棋であることが突然言いたくなったので、その著書についてまとめておきます。天彦九段についてはまた回を改めて。

 

【パーフェクトシリーズ(日本将棋連盟)】

・『康光流現代矢倉1~3』

康åæµç¾ä»£ç¢åã1ãåæ3ä¸éæ¦æ³ (ãã¼ãã§ã¯ãã·ãªã¼ãº)

1997年出版。20世紀的な組み合う矢倉を題材に、佐藤九段が指した将棋を通じて定跡を解説した実戦集。1巻では▲3七銀戦法を、2巻では森下システム、3巻では急戦を扱っている。これと同じシリーズで、『康光流四間飛車破り』が出版されている。康光流現代矢倉については森下九段と増田六段の師弟の間にこんなエピソードがある。

 

佐藤康光の将棋シリーズ】

・『佐藤康光の矢倉』

・『佐藤康光の力戦振り飛車

・『佐藤康光の一手損角換わり』

・『佐藤康光の石田流破り』

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いずれも2011年前後の出版。当時の流行の最先端だった各戦型について、九段の定跡研究を、実戦例をまじえつつ解説する。この記事を書くために改めて読んでみると、特に石田流破りなどにおいて、久保九段や戸辺七段といったスペシャリストを相手に自信の読みをもとに真っ正面からぶつかっている様子が見て取れる。居飛車党の旗頭にふさわしい棋士の将棋と言って過言ではないだろう。

 

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ここからの中盤のやり取りは、ぜひ本書『石田流破り』で解説とともに楽しんでもらいたい。

(上図からの指し手)
▲5四歩 △同銀右 ▲7四歩 △同 歩 ▲6六角 △8二飛
▲7四飛 △7三歩 ▲6四飛 △8六歩 ▲6一飛成 △6二角
▲5五歩 △6三銀 ▲7四歩 △8七歩成 ▲7三歩成 △同 角
▲6五桂 △6二角 ▲8三歩 △同 飛 ▲4五銀 △6四歩
▲5三桂成 △同 角 ▲5四歩 △6二角 ▲同 龍 △同 金
▲4四銀 △5五歩 ▲7一角 △5四銀右 ▲6二角成 △7八と(下図)

 

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【最強将棋塾】

佐藤康光の戦いの絶対感覚』(2000年)

『読みの技法』島朗羽生善治森内俊之との共著、1999年)

河出書房新社から出版されていたこの最強将棋塾シリーズは、プロが実戦で考えている内容を赤裸々に描き出した、将棋史に残る名著群といって差し支えない。『読みの技法』は提示された局面について羽生、森内、佐藤の島研メンバーが個別に指し手の方針や読み筋を語る、いまでいう「イメージと読みの大局観」のはしりである。「絶対感覚」シリーズは序盤・中盤・終盤の各局面が提示され、読者の考えと著者の考えを比較して読み進めるタイプの、当時画期的だった棋書だ。佐藤九段のほかに羽生、谷川、森内という版があるが、佐藤先生の将棋は、仕掛けから終盤まで一本の線を引いたような完勝型の棋譜が多く、個人的には強い影響を受けた。

 

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(佐藤―谷川、名人戦⑥1998.6)

こういった、飛車角金銀の接近戦における形勢判断や指し手の方針は、初段から高段に一皮むけるためのきっかけの一つになった記憶がある。

 

【実戦集】

・『羽生&佐藤全局集』(2006年)

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・『佐藤康光勝局集』(2019年)

天衣ç¡ç¸« ä½è¤åº·ååå±é

 前者に関しては何度も棋譜をならべて、間違いなく血肉になった棋譜集。最近、プレミアムブックス版で復活した。後者は今年出版された、佐藤将棋の集大成である。じっくり時間をかけて味わいたいものだ。本書の出版に際してはマイナビインタビュー記事があり、こちらも佐藤将棋のエキスがあふれ出ていて、良い。

 

本書に載っている将棋から、印象に残っている将棋を一局だけ紹介する。

 

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佐藤ー藤井、1997年8月、王将

 

有名局だが、相穴熊の定跡となった将棋。

この▲5五歩からどこまでが事前研究だったかはわからないが、終盤の入り口あたりまで、将棋盤の裏まで読みつくしていたのではないかと思わせる将棋だった。やはり佐藤九段の将棋は読みで真っ向勝負するのがかっこいい。

 

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将棋世界

将棋世界連載自戦記

1996年頃から2年間、自戦記を連載していた。また、2002年からも同様の連載を担当していた。後者を書籍化したのが『注釈 康光戦記』である(2004年)。注é 康åæ¦è¨ (æå¼·å°æ£21)

どうも私の自戦記は書くと難しくなってしまうようで、ファンの方から感想を聞いた覚えもほとんどない。実際には詰みがない局面で「以下詰み」と間違ったことを書いても問い合わせがなかったくらいだから、よほど読まれていなかったのだろう。(前書きより)

 ↑この自虐と内容のレベルの高さとのギャップが好きです。

 

・「我が将棋感覚は可笑しいのか?」(2002年6月号)

一言で言うと、佐藤九段自身は自分の将棋を序盤巧者と思っていたが、周りの人からは中終盤の力で勝っているように見られていたということにしびれを切らして書いた反論。当時のタイトル戦のポイント解説といった体なのだが、このころまではしっかりとした定跡の将棋を指しているような様子である。その後、2007年ころの 棋聖戦における(佐藤&渡辺)ダブル自戦記のあたりはもういわゆるその...変態将棋になっている。羽生佐藤全局集を見る限りは、2005年頃から「変質」がおこっていたようである。

 

【インタビュー記事】

読んでください。

・「棋士の感謝」(ライブドアニュース

 http://news.livedoor.com/article/detail/16242620/ 

東京弁護士会(PDF注意)

https://www.toben.or.jp/message/libra/pdf/2018_01/p20-23.pdf

 

【その他】

可能な限り全部読んでいただきたい。

・『長考力』(本人)、『新手への挑戦 佐藤康光小伝』(上地隆蔵)

é·èå 1000æåã読ãæè¡ (å¹»å¬èæ°æ¸)æ°æã¸ã®ææ¦âä½è¤åº·åå°ä¼

羽生将棋に出合って佐藤将棋が変質していく様が面白い。

・「最強居飛車穴熊マニュアル」なつかしの定跡書

・その他監修本、詰将棋本、手筋本など

詰将棋に関してはなるほどの仕上がりで、こちらは微笑ましい。

 

【参考文献】

・『純粋なるもの』『島研ノート 心の鍛え方』島朗

など、島研主宰者の島九段による証言は多い。

他にも何かあれば追記していきます。

今日買った本

今日神保町で買った本たちを写真で紹介。

数字は金額。


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2500 1000

米長先生若い


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200 400

蛸島先生変わらない\(^o^)/

 


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800 1663

 


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300 300

 


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300 300

 


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300 300

 


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300 300

 


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300 300

 


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300

 

ぜんぶで10000円しなくてお買い得でした。

 

最近はおかげさまで人生に余裕が出てきたので、語学の本も読むようになりそうです。

関口存男先生なつかしい(*´∀`*)


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昭和が遺した棋書【3選】

平成がそろそろ終わりますね。

 

私は平成の初期に生まれて、小学生のころ将棋を始めました。平成生まれとはいえ、棋書や棋譜など、将棋上達のうえでのメソッドは昭和までに生まれ、確立したものでした。その点、最近の若者たちを見ているとソフトでの序中盤研究に余念がなく、平成の上達メソッドを謳歌しているなと感じます。令和のこどもたちはどんな将棋を指すようになるのでしょうか。

 

今回は昭和と平成が生んだ将棋の名著を個人的な視点で選び、3冊づつ簡単に紹介します。(出版年が平成か昭和かというくくりでなく、執筆した棋士の活躍した年代でまとめることにします)

 

【昭和編】

(1)「大山康晴全集」

(2)米長邦雄「米長の将棋」

(3)熊谷達人「将棋次の一手

 

 

【昭和編】

(1)「大山康晴全集」

伝説の大名人が遺した棋譜集。初期のころは居飛車での戦いが目立ちますが、壮年期から本格的に採用した振り飛車はいまでも最高級の勉強材料として多くの振り飛車党の助けとなっています。大山将棋についてはエッセイ・技術書ともに副得本が多いですが、やはりそのいずれをも差し置いて、一次文献としての本書が語るものの大きさに圧倒されます。つい最近プレミアムブックスとして復刊されたので、未読の方はぜひご検討ください。

大山康晴全集 プレミアムブックス版|将棋情報局

 

大山将棋は、有利になってからの余し方が好きです。

図は大山先生の後手。

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島弘光ー大山(1972王座)

▲5三歩以下、 △6二金左 ▲3一龍 △4三飛 ▲3五角 △4六歩
▲5二歩成 △同 銀 ▲7五歩 △5七歩成 ▲7四歩 △同 銀
▲5七金 △5三歩

 

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(2)「米長の将棋」シリーズ

1980年ころに平凡社から出版されたこのシリーズは、米長邦雄永世棋聖が指した棋譜を戦型ごとに分類し、自戦記形式で解説した実戦集です。おもに中盤の仕掛けのあたりから終盤の入り口までを、自身の読み筋や棋理を交えながらわかりやすく説明しています。

私自身、指導者に言われた「駒がぶつかる(仕掛けの)局面はしっかり読まないといけないよ」ということばをテーマにしていたので、マイナビさんから本シリーズが復刊されたときは重宝して読んだ記憶があります。

 

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第3巻第17型より

▲2二歩以下、 △7七歩 ▲同 桂 △7四歩 ▲8六歩 △7五歩
▲8七銀 △7四銀 ▲2一歩成 △6三玉 ▲3一と △3五飛
▲同 桂 △7六銀

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再現性のある情報を提供するということが棋書の最大の役目であるとすれば、優勢の将棋を勝ち切る技術はその最大の魅力のひとつであるといえそうです(もう一つは初形の局面から優勢を作り出すこと)。米長先生の将棋というと泥沼流の逆転術というイメージが強いですが、そうした技術はむしろプロとしてはできて当たり前でしょうという表現をされていることが多い気がします。本局面の手順をいい例として、本書では、こうした優勢から勝ちへという流れが一本の糸のように表現されているところに出合うことができるでしょう。

 

(3)熊谷達人「将棋 次の一手 実戦の手ほどき」(弘文社)

1979年に出版された本書については少々説明が必要でしょうが、このツイートで代用させていただきます。

 

みずたま on Twitter: "『将棋次の一手』熊谷達人
1984年発行。終盤の妙手を探す問題が前半を占めるが、これは2011年に文庫化済み(終盤の鬼手)。本書の醍醐味は後半部「実戦の手ほどき」で、プロの実戦を題材として仕掛け周辺の好手を戦型別に約140例紹介してある。知らない手筋が多く驚いた。

#今日の棋書… https://t.co/wI3KDmCp8T"

 

出版当時のプロ棋戦で出てきた手を解説する「実戦の手ほどき」では、派手な手こそ出てこないものの、プロの実力と読みに裏打ちされた味のある一手が集められており、玄人好みの手筋集となっています。

 

たとえば実戦の手ほどき「居飛車編 第12題」から。

単に▲7四歩△同飛▲7六歩では先手不満です。

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原田ー広津戦(順位戦B1)

△8四飛以下、 ▲2四歩 △同 歩 ▲2五歩 △同 歩 ▲7四歩
△同 飛 ▲2四歩 △2六歩 ▲同 飛 △4四角 ▲2八飛
△2二歩 ▲7六歩と進行。

 

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2筋をへこませて、先手不満ない進行となりました。

 

この本は絶版になってしまっているのですが、街で見かけた際はぜひ手に入れてあげてくださいね。

 

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次回は平成編をやろうと思います。

詰将棋解答選手権(チャンピオン戦)に行った

いてはりました。

 

昨年の解答選手権(チャンピオン戦)の体験記はこちら。

mizutama-shogi.hatenablog.com

 

今回は会場がいつもの渋谷のNHKのところではなく、大井町きゅりあんでした。

きゅりあんと聞くとなぜかふかわりょうを思い出す)

 

年に一度行われる詰将棋解答選手権は春の風物詩であり、詰将棋ファンにとっての晴れの舞台とも言えます。

この選手権は、1~5手詰を解く初級戦・1~15手詰を解く一般戦と、39手までの詰将棋を解く無差別級のチャンピオン戦からなっています。チャンピオン戦はプロ棋士詰将棋作家も参加します。詰将棋パラダイスという専門誌で選題を担当する作家さんなども参加していたりします。(選手権に問題を提供した人は出られない)

 

今日おこなわれたチャンピオン戦では、90分で詰将棋5題を解くというセットを2ラウンドにわけておこない、計10問100点満点の点数を競うものです。

 

私はチャンピオン戦に参加するのは昨年に続いて2度目でした。

昨年は目標を「各ラウンド1問完答、合計20点」として、何とか22点で達成しました。

 

昨年から今年にかけて努力を怠っていた自覚があったので、今回も前回と同じ目標にしました。ツイッター上の #おやすみ詰将棋 も自分自身ではあまり解いていないし...(というか解いたことがあるものを出している)

ちなみに選手権の過去問はすべてネット上に掲載されています。事前準備に使いましょう。

詰将棋解答選手権の過去問: 詰将棋メモ

 

また、今回の問題はこちらのページにて速報されました。

第16回詰将棋解答選手権 チャンピオン戦 第2ラウンド出題作品 - 詰将棋解答選手権 速報ブログ

第16回詰将棋解答選手権 チャンピオン戦 第1ラウンド出題作品 - 詰将棋解答選手権 速報ブログ

 

興味がある方はぜひ自力で解いてみてください。

 

詰将棋を誰にも邪魔されずに合法的に解ける180分は本当に贅沢です。年に一度の楽しみになっています。今回は目標としていた20点を大幅にクリアし、結果的に40点を超えることができました。望外です。

1番、2番、6番、7番という、各ラウンドの冒頭の基本問題でしっかり得点できたのも好材料でした。

もちろん、もうすこし時間をかけていれば解けていた問題(3番、8番)もあるのですが、時間のかけ方も実力ですので仕方ありません。また、4番、5番、9番、10番に関しては最初からあきらめていたので(現実的にはそれが良かったが)、次回は60点を目標に、より高得点を目指したいと思います。

また、個人的に目標としている人や尊敬している人が同じ東京会場で受験していたので、試験直前・試験中はそれもいい刺激になりました。ツイートでも言及しましたが、やはり努力する人にはかないませんし、努力する人と話すと、まさに慕わしい気持ちになります。今どきの言葉で言えばエモいなのでしょうね。あの人に負けて悔しいとかも、若干あります。

 

それから、今回の作品の中では、2番の谷本治男さんの作品に感動しました。

1手1手が変化に至るまで非常に丁寧に編み込まれていて、まさに芸術作品といった感じでした。90分の中で芸術鑑賞までした気分です。時間が過ぎるのが惜しく、ずっとここにいたいという気持ちになりました。

 

体力が残っていれば思考内容も書きたかったですが、これから解くというヒトもいるでしょうからやめておきます。5番と10番はヒトが解くのは大変だなと思いましたし、これを作り出す作家は何者なのだろうと思いました。また、9番は作るのも大変でしょうが、実戦的な局面だけに解くほうがもっと大変だろうなと思いました。

 

詰将棋は楽しいです。

新橋駅前古本市

いてはりました。


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テントの合間を縫うようにして、所要時間わずか10数分で買い求めた棋書をまとめておきます。

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定石小辞典。2冊で2000円。

囲碁の本。誠文堂新光社の小辞典シリーズは置碁やヨセなど、隠れた名著が多いのです(誰も隠していない)。

 


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詰パラ1981年バックナンバーは12冊で3000円の値段設定でしたが、この年度のみ特別号の『三百人一局集』がついており13冊で4000円でした。


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その他の細々とした本。それそれ100円、500円、200円。

 


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囲碁宝典は5000円。詰碁や手筋や定石など、囲碁にまつわるあらゆる知識が詰まっています。将棋にも将棋宝典(中原誠)がありますが、どちらも情報の体系化の観点からもとても勉強になる本です。


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藤沢秀行先生のタイトル戦打碁集。

1万円でしたが、箱入り上製で状態もよく、いい買い物をしました。


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これからじっくり読もうと思います。

果たして囲碁の知恵を将棋に活かすことはできるでしょうか(それを目的てしてはやってないけど)。

 

 

 

詰将棋のルールについて

何人かから立て続けに聞かれたので、ここにまとめておきます。

手元にあった原田泰夫『最強の詰将棋200題』のルール紹介を例に取りますが、どの本でもルールの説明はほぼ同じでしょう。

 

1. 攻め方は王手の連続で玉を詰めること。

2. 攻め方は最短手順で玉を詰めること。

3. 玉方は最長手順を選ぶこと。

4. 玉方は盤上の駒と攻め方の持駒以外の駒を使ってよい。

5. 攻め方は持駒と、王手をしながら取った駒も使ってよい。

6. 玉方は逃げ手順で、同手数の二つの手順がある場合、攻め方に駒を与えない方を正解とする。

 

なんだか難しそうですね。要約すると、1. 王手の連続で玉を詰ますこと、2. どちらもなるべく相手に苦労をかける手順を正解手順とします、というかんじでしょうか。

 

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これは▲2一金△1二玉▲1一金△2二玉▲2一飛成の5手詰。

▲2一金△3二玉▲3一飛成の3手詰は実戦なら考えられるが、詰将棋の答え方としては不適。もちろん実戦なら▲2一金にて投了もある笑

 

そもそも詰将棋になぜルールがあるかというと、もちろん唯一解が定まるのが作品としてエレガントというのもありますし、雑誌懸賞などで答え合わせが必要な際に解がいくつもあっては困るということが大きいでしょう。

 

詰将棋において一番大事なことは、「『玉方のいかなる応手に対しても詰み手順があるよ』という攻め方Aが少なくとも一つは存在する」ということでしょう。

攻め方Aはすなわち正解手順のことですが、この手順を追っている限り玉方は詰みを逃れることはできないということです。

こうした攻め方Aが存在しないなら、その詰将棋は不詰といって問題として成立しないということになります(作者の責任)。


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こちらは例題。

攻め方1 ▲53銀a△51玉▲52金(詰み)

 →一見、詰みにみえますが、これは2手目に玉が△31玉と逃げれば不詰ですので、2手目の応手が誤り。1手目の攻め方も誤解となります。

攻め方2 ▲43銀

  →この初手は正解です。玉方の逃げ方3つ(同玉などの反則手は無視)に対して頭金の詰みを用意しています。

 

詰め上がりの一例(初手から▲4三銀△51玉▲5二金)
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詰み上がった結果、攻め方の持ち駒には何も残りませんでした。これは詰将棋作家さんが苦心するところで、持駒に何もない詰め上がりはきれいですね。ただしこのことは解く側のルールとしては関係ありません。玉方がベストを尽くしても詰め上がりの攻め方に駒が余るなら、それは作る側の責任です。第一、実戦ではそんなこと気にしませんよね。

 

また、この手順の中で2手目の応手が3 つありますね。このことは気にしなくて構いません。どの2手目に対しても必ず詰みがあるとわかることのほうが重要です。3手詰だとわかりづらいですが、これが11手詰とか23手詰とか長い詰将棋になったときに、詰み手順最後の2手を完全に限定することがさすがにできないことが多いです。複数ある手順の中からどれか1つを回答すればいいでしょう。

 

昨日のおやすみ詰将棋はこんな感じでした。

 

正解は、▲2三金△同金▲3二飛成△2二金▲2三歩成までの5手詰。

3手目が一間竜と呼ばれる形ですね。

 

4手目はなにか合駒を持ち出してくる可能性もありますが、このばあいは▲2三歩成として金が取られての詰めあがりとなります。

 

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詰将棋を解く観点からは本質的な点とは言えませんが、わざわざ攻め方に駒を取らせてフィニッシュというのもしゃくですから、取られそうな金を逃げながらの合駒が(解を限定する必要があるときの)正解となります。実戦なら何を合駒してもいいでしょう。

 

 それから無駄合い(無駄な合駒)のことが書いていなかったですね。

飛び道具で王手をされてそれに対して合い駒を打つとします。その駒が取られてその後も出番なく玉が詰まされるなら、その合駒は犬死というか、無駄だったことになりますね。こうした合駒は打たないお約束です。美しくないですしね。

 

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この図はこのままで詰みです。

ただし実戦(特にウォーズの3分切れ負け)では6回合駒をすることで時間が稼げるでしょう笑

 

さて、これまでのことを踏まえて次の問題を考えてみてください。

いま作ったのですが、なるべくルール上のことを考えられるようにしました。

 

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話が長くなったので続きは次回。

この問題の作意は9手詰です。

詰ませ方がわからなかったら前問をヒントにしてください。

将棋上達法について

スマホは便利ですね。

ここ数年とかに限った話ではないですが、道を歩けば、イヤホンで音楽を聴いたり歩きスマホをしたりしている人に出合わないほうが珍しいです。今日私は電車の中で本を読んでいる人を見かけたのですが、本当に珍しいものを見た気がしました。

 

そうした現代の日本がどうこうみたいな話は置いといて、将棋の話。

強くなるには本を読んだりネットを見たりして情報を仕入れるのも大事だけど、(1)自分で(将棋を)考える時間、そして、(2)自分のなかでその情報が消化できているか、自分がいま何を考え、悩んでいるかを思いやる時間も大事だよということを書いておきたいと思いました。具体的には、スマホの電源を切って自分だけの時間を持とうということです。

これでもう気づいてしまった人は、もうこの続きを読まなくていいでしょう。

 

いくつかの言説を引用します。

私は、今の時代は、いろいろなことが便利になり、近道が非常に増えた時代だと思っている。何かをやろうと思ったときに、さまざまな情報があり、安易な道、やさしい道が目の前に数多くある。楽に進める環境も充実している。昔は、遠い、一本の道しかなかった。そのため、選択の余地なくその道を歩んだけれど、今は近道が他にたくさんできている。わざわざ一番遠い道を選んで行くのは損だという思いにかられる。その横では近道で通り過ぎてゆく人がたくさんいるのだから自分自身で、「何をやっているのだ」と思うこともあるだろう。逆に、昔よりも選択が難しい時代なのかもしれない。しかし、遠回りをすると目標に到達するのに時間はかかるだろうが、歩みの過程で思わぬ発見や出会いがあったりする。将棋でも、直接対局に関係ないように思えることが、あとになってプラスになったということはいろいろある。対局で、道の場面に遭遇したときには、直接的な知識や経験以外のものが役に立ったりするのだ。

羽生善治『決断力』(角川新書、p155-156)

 

羽生九段が著作やインタビューの中で、たびたび「意図的に頭を空っぽにする時間を設けている」という趣旨のことをおっしゃっていることも有名ですね。羽生先生に関しては私は以下のツイートが好きです。

 

話は変わって、とあるアマ強豪の方が将棋ブログにおいて、上達法について書かれていたのを目にしました。以来、その文面は悩んだ時に何度も読み返すようになりました。ツイッターで何度か紹介しているので知っている方も多いでしょう。

読みの技法 番外編 県代表クラスになる為のある一線 | 将棋・序盤のStrategy ~ 矢倉 角換わり 横歩取り 相掛かり 中飛車 四間飛車 三間飛車 向かい飛車 相振り飛車 ~

 

私のお気に入りのフレーズはこちらです。長くなりますがお付き合いください。

結局、自分の何がいけなかったかというと、
根拠の無いものに振り回されすぎていた、
っていうのが原因だったんですね。

根拠の無いもの、っていうのは、
「定跡書に書いてあったから」とか「プロが指したから」という、
根拠がありそうでいて、実は自分の考えが全く入っていないものだったりします。

そうじゃなくても、
「根拠の無い自信」とか「根拠の無い自分像」、「根拠の無い将棋像」
こういったものに縛られてしまう事って無いですかね?

勉強というのは、将棋そのものの知識を得ると同時に、
自分を知るための道具だったのだと、収束する渦の世界の中で気付いたんですね。
4段に達するために必要だったのは、知識ではなく自立だったという事です。

兎角、人間というのは実体の無いものに振り回されるものだと思います。
最近は情報が多すぎて、分かったつもりになってしまう事も多いでしょう。
そこに「虚像の自分」が出来やすく、迷いやすいのではないかと思います。


長い間「上達が出来ない」とお悩みの方には、
自分に素直になってはいかがですか、と言いたい。

「やっぱり詰将棋が必要なのかなぁ?」と頭によぎれば詰将棋を解けば良い。
「本当に定跡書の内容を理解してるのかなぁ?」と思えば検証すれば良い。
「実戦不足かなぁ」と思えば実戦を指す機会を多くすれば良い。

心が欲しているにもかかわらず、やらないのが人間である事を私は知っています。
でも、つまらない事を考えず、「本当の自分」が欲している事を素直に実行したら良いんです。
つま先立ちしたり、自分に嘘をついたりしても、「本当の自分」が悲しむだけじゃないですか?


こうやって「本当の自分」を大事にする考えをしていくと、
悩みや情報が大量にあっても、結局削ぎ落とされていくものだと分かってきます。
勉強をしている段階では、要らない悩みや情報も沢山まとわりついているのですが、
「本当の自分」を大事にする事で、洗練する事が出来るからです。
(洗練されているだけで、悩みが消える事は無いんですけどね)

ですから、周りの人間が出来る事というのは、
出来るだけ確かな情報や知識、環境を与えるところまでだと思うのです。
「本当の自分」を大事に出来るのは、結局自分自身に他ならないからです。

 

また最近では、とある講師仲間が言ってた言葉にも感心しました。

彼は近くに右四間飛車対策に関する講座を受け持つことになっていたのですが、「最近はずっと右四間(の局面)を見つめています」とのことだったのです。

やはり局面をパソコンに打ち込んでピッポッパ、ではないんですね。強い人ほど将棋と向き合っているという印象を抱きます。そして本当に強い人ほど、1対1で(つまり他者の意見を介さず)将棋と向き合うことを苦としていないので、そうした営みが努力として語られることが極めて少ないのではないでしょうか。

 

私自身は、これまでそれほど将棋と向き合ってこなかったほうだと思います。唯一、詰将棋は自分なりに取り組んできました(好きだから)。しかし最近はそれも、「それが苦しいと思うならば無理に向き合う必要もないのかな」と思うのです。向き合うのも才能だし、努力するのも才能という面もあるし(だからといって努力を放棄するのはまずい)。

 

個人的に、コツは瞑想なりなんなり、自分だけの空間にいる時間を1日5分だけでも持つことかなと思います。それも難しければ、毎日シャワーを浴びている時間にちょっと将棋のことを考えるとか(なにも将棋に限った話ではないですが)。

 

それから、最近は私はできていませんが、将棋プレミアムやAbema、ニコ生でプロの対局の映像を見るのも好きです。これは録画でもいいのですが、昼食休憩以降の午後はとくに難しい局面を一人で考えている人が二人いるという空間になるので、おすすめです。

 

答えがあるかもわからない局面をうんうんうなって考えるという意味では、道場に行って他人の将棋を検討するのもいいかもしれません。自分より低級の人や同じくらいの棋友がいるなら自分の持っている知識を論理的に順序立てて説明するのもいい勉強法です。

 

とまあ偉そうにつらつら書いてきたので、落ちをいいます。

それとは別に、強い人はすごい量の努力をしています笑

自分の実体験に基づいた勉強法ですが、まず小学生の頃には、平日は学校があるので5時間ほど、休日は7~8時間将棋に携わります。自分の場合は将棋道場に通うのがメインでした。

 中学生になると体力も付いてくるので毎日7~8時間。道場に通う時間は変わらず、増えた分はネット将棋で対局していました。対局数は中学時代で一日10局以上、30局未満で指していました。また詰将棋は解かず、棋譜並べは一日2~3局。当時は今のようなネット環境もなくアナログ的に盤に並べていました。

 三段リーグを戦った高校時代には毎日10時間前後の勉強。基本的な勉強内容は変わっていません。詰将棋はやらず、棋譜並べは2~3局。メインは実戦で、やはり10局以上、30局未満。ただし、持ち時間は、日々の勉強時間が増えた分だけ多くなったと思います。

 以上が自信を持って紹介できる勉強法です。これをやれば絶対プロ棋士になれます。

 

永瀬拓矢『全戦型対応版 永瀬流負けない将棋』(マイナビ)p273

 

 

【3/7追記】

引用RTで換言いただいで思い出したのですが、棋書を買うときにも、「この本くらいは読んでおかなきゃ」といった自分の理想像に導かれるより、「この間、道場で石田流のあの攻め方に負けて悔しかったからその対策を知りたい」みたいに具体的かつ需要優先な手順で手に入れるといいと思いますよ。