オジサン攻めを受ける
今日は午前中に時間があったので、御徒町の道場に行って将棋を指してきました。
この道場は11時開店と早いのでなかなか便利です。
最近では都名人戦の予選があったようで(そろそろ終了間近)、そういう日は人の出も多そうです。毎日トーナメントもやっているようですが、私は参加する時間がなかったので野良での対局を2局だけ指して、あとは棋譜並べをしていました。
三段の男性と四段の男性と手合いがついたのですが、後のほうの対局がすこしおもしろく、また反省点もあったので備忘として棋譜を紹介しておきます。
先手:おじさん(四段)
後手:みずたま
【初手からの指し手】
▲7六歩 △3四歩 ▲6六歩 △8四歩
▲6八銀 △6二銀▲5六歩 △5四歩
▲6七銀 △4二玉 ▲4八銀 △3二銀
▲5七銀 △3三銀 ▲7八金 △3二玉
▲6九玉 △3一角▲6五歩 △5二金右
▲2六歩 △8五歩 ▲2五歩 △4四歩
▲4六歩 △4三金 ▲5八金(第1図)
出だしこそノーマル振り飛車かなという感じでしたが、さすがは百戦錬磨のおじさん、この雁木の構えを得意にしているようです。ここまで両者ノータイムでした。
【第1図からの指し手】
△6四歩 ▲同 歩 △8六歩
▲同 歩 △6四角 ▲6五歩 △8六角
▲8七歩 △4二角 ▲3六歩 △7四歩
▲4五歩 △同 歩 ▲3七桂(第2図)
後手は手順に角をつかって8筋と6筋の歩を一気に交換できたので不満なしの序盤戦です。場合によっては△8六歩▲同歩△8七歩▲同金△8六角のような攻め筋も見えてきており、一方的に攻められることはなさそうです。
先手のおじさんは▲4五歩とかるく味を付けてから勢いよく桂を跳ねてきました。手つきに迷いが見られません。
ここから私の指した次の手が問題でした。
【第2図からの指し手】
△5三銀▲4五桂 △4四銀右
▲2四歩 △同 銀 ▲4六銀 (第3図)
▲4五桂と跳ねようとしている手に対して△5三銀右と、あえて両取りをかけさせる手はたまに見かける手です。以下▲4五桂△4四銀右▲3三桂成△同桂として、4筋を手厚く構える狙いです。ついつい筋で指してしまいましたが、この場合は3二玉型で玉のコビンが薄いため疑問でした。代えてすなおに△6三銀と上がって攻めを受け止めるのがよかったのですが、実戦的にはこの不安定な玉形を指しこなすのは自信が必要でしょう。実力不足が招いたミスでした。
なおつづく先手の▲2四歩の突き捨ては悪手です。
【第3図からの指し手】
△1四歩▲4四角 △同 金
▲5三銀(第4図)
第3図からじっと△1四歩と突けたのは好手だったようです。▲2五歩に△1三銀が味よく、この数手で後手が持ち直しました。実戦は角切りから図の▲5三銀で先手の攻めが決まっているようですが...
【第4図からの指し手】
△4五金▲4二銀成 △同 飛
▲4五銀 △同 飛 ▲4七歩 △6六歩
(第5図)
第4図からの△4五金で将棋は終わりました。実戦もここでおじさんが固まり、「そんな手があっちゃあね」とつぶやいたのが聞こえました。▲4二銀成と角を取った手に対して△同飛が、4五金にひもをつけて幸便なのです。
以下は差がついてしまったので省略します。
この将棋を通じてつくづく、将棋は基本手筋が大切だなあと感じました。
最後に、武者野勝巳先生の「手筋の達人」(マイナビ出版、2005年)のまえがきから引用します。
「私は田舎の縁台で将棋を覚え楽しんだので、すべての攻防は数の力で決まると考える筋の悪い将棋でした。初めて将棋道場に行ったおり、初段のおじさんにダンスの歩や十字飛車で翻弄され、こんな駒の使い方があるのかと大いに感心したものでした。
(中略)将棋の指し手は、手筋の組み合わせで構成されていると言っても過言ではありません。新定跡を覚え、棋友を相手に使ってみるのも楽しいものですが、妙手筋を覚え、これが使える形へあなた独自の構想を練ることこそ、将棋本来の楽しみ方なのではないでしょうか。」
ちなみに今回紹介した△4五金の手筋は、本書の第65問として紹介されています。興味がある方は是非読んでみてください。