みずたま将棋ブログ

みずたま(@go_tom_89)のブログです

【指導対局振り返り】ねこまど24時間耐久イベント

さる12月26日と27日、「【ねこまど将棋フェスタ】公開オンライン指導対局 真冬の24時間耐久100番勝負!」と銘打った公開オンライン指導対局会が行われました。

 

このイベントは、計14人の棋士女流棋士・ねこまど将棋教室講師が協力して1時間×24枠の多面指し指導(2~4面指し)を行うというものです。

 

イベントの模様はYouTubeアーカイブとして残っているので興味のある方はご覧ください。

Vol. 1  

公開オンライン指導対局 真冬の24時間耐久 100番勝負! Vol.1 2020.12.26 12:00-19:00 - YouTube

 

Vol. 2  

 

youtu.be

 

Vol.3 

公開オンライン指導対局 真冬の24時間耐久 100番勝負! Vol.3 2020.12.27 2:00-12:00 - YouTube

 

 

さて、このイベントで私は27日(日)の午前0時から午前2時の2枠を担当しました。今回はこの中で対局した5人の方との将棋を振り返りながら、思ったことを書いていこうと思います。普段、駒落ちの上手が感想を書き残すことはあまりないと思うので、興味を持ってもらえたら幸いです。

 

◇1枠目対局開始!(0時20分)◇

参加してくれたのはうしさん(平手)、あかりさん(6枚落ち)、さくらはな。さん(2枚落ち)のお3方。

3人ともいつもお世話になっている顔なじみのメンバーですが、それぞれ三段、初段、5級という実力者ぞろいなので気が抜けないなと思っていました。

 

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まずはあかりさんの将棋から。6枚落ちの1筋攻めの定跡で、完璧な手順で端を突破されました。このような展開になったときに上手としてまず意識するのは、瞬殺されてはいけないなということです。通常のレッスンであればと金や成香の成駒を金銀とどんどん交換させてすぐに「負けました」となってもいいのですが、今回はあくまでイベント。ここまでのプロの先生方の指導対局を見ていても、1局をゆっくり丁寧に指すというコンセプトが主流かなと感じ取りました。

 

図の△5五歩はそんな考えで指された一手で、ひとまず圧敗をなくしておいてから終局図を頭の中でデザインします。終局後、あかりさんには「もう少し短い手数で勝つつもりで...」といわせてしまいましたが、これは上手が惨めな負け方をしたくないがための勝手に付き合ってもらった格好なのです(笑)許してくださいm(__)m

(普段のレッスンならたとえば△5五歩のところで△6二金▲3二成香△同金▲同龍で投了です)

 

そんなことを考えているうちに、さくらはな。さんの将棋が佳境に入っていました。

さくらさんは初段に成れるかな?と考えているうちに本当に初段になってしまった方で、これから二段、三段とどんどん上を目指しているというもっぱらの噂ですので、ここはなんとか痛い目に遭わせてあげないとといけません。銀多伝でくることはわかっていたので、金銀を盛り上げずに専守防衛の構えを取りました。

 

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手なりで駒組みを進めていると、図のようになりました。はやくも8筋が受かっていません。ぴえん。この展開、どこかで見たことがあるなと思ったら、夏の「ねこまど将棋フェスタ 公開オンライン指導対局 真夏の12時間耐久50番勝負!」でやられてた記憶がよみがえってきました。上手はたしか北尾先生でしたが、その将棋はさくらさんの完勝だった気が...こわい。

 

こうなったらしかたないので手筋の△8五同桂で急場をしのぎ、▲同桂△7五歩で角道を止めます。8筋の折衝をそのままに長引いてくれればまあ何とかなるだろうと思っていたのですが、そこで▲5六桂(下図)が痛打でした。

 

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痛すぎる...。△5三銀や△7三銀には▲7五角があり、収拾がつきません。△5五銀も▲7五角が冷静で、4二にいる金の位置の悪さが祟ります。ここでは負けを覚悟しましたが、やはり前局同様すぐにつぶれてしまうのは(下手としてはもちろんうれしいのですが)見せ場に欠けてしまうので避けたいなあと考えていました。今回は平手、2枚落ち、6枚落ちの3局を1時間ということだったので、終局のタイミング的には6枚落ち、2枚落ち、平手の順番にして、かつそれぞれの対局で各1個ずつポイント図を見つけられればいいなと考えながら指していました。多面指しだと終局のタイミングが一緒になってしまうとお客さんに終局図のまま待ちぼうけということになるので、個人的にはそうならないように普段から心がけています。

 

3局目のうしさんは普段から私もよく将棋を見ている方です。二段を目指す勉強会に参加されているようですが、新宿道場では三段で指しているとのこと。ねこまどの二段は厳しいなあ。将棋は平手で、図のようになりました(うしさんの▲先手)。

 

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ノーマル三間飛車居飛車急戦の形で、いま9筋の歩を突き合ったところ。局後、うしさんから「振り飛車の展開をやってもらいたかったのでよかった」と言ってもらえました。映像をよく見るとわかるのですが、後手の私は2手目に△8四歩を指そうか迷って結局△3四歩を選んでいます。ここは私の第六感が働きました。

 

図から、後手は△3五歩▲同歩△1五角(下図)と仕掛けていきました。指導対局の性格上、上手から動いていくのは本意ではないのですが、直前に△9四歩▲9六歩の交換が入っています。この2手は後手「△3五歩行っていいですか?」→先手「どうぞ」という意味のやり取りなので仕掛けに踏み切りました(△5四歩や△1二香も有力)。この2手のやり取りにはうしさんも同意してくれると思います。

 

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さて、そうこうしているうちにあかりさんが上手玉を詰ませてくれました(下図)。

 

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投了図を見ればわかる通り、下手の完勝です。6枚落ちは下手が完勝してくれると上手はうれしいです。例によって上手玉は左辺に大脱走していますが、これはご愛嬌ということで許してもらいましょう。この展開を嫌えば、さらに下図のところで▲4三銀と手厚く打って4~3筋方面への逃げ出しをなくしておく手は有力でした。

 

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あかりさんは最近は忙しくて将棋を指せていないとのことでしたが、ブランクを感じさせない指し回しで勝利。この調子で4枚落ちに挑んでもらえればと思います。

 

このあたりでさくらはな。さんと将棋が次の局面の迎えました。

 

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ここから9手一組の手筋で上手陣はガタガタになってしまいました。

よかったら実戦の手順を考えてみてください。

 

 

 

 

 

【正解】

▲7五金△同金▲同歩△6三玉▲7四歩△同玉▲7五金△6三玉▲7四歩(下図)

 

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このような駒の繰り替えができるのは二枚落ちの手合いではありません(笑)。このような模範的な攻めを見せられてしまっては上手なすすべなしです。さすがにここで投了するわけにもいかないので△8六桂と打って時間繋ぎをしましたが、下手に不利な局面が一回もないまま終局しました。

 

上手の△8六桂のような手に対する下手のコツとしては、場合によっては7八金を見捨てて攻めてもいいということを感想戦でお話ししました。下手の7五金が上手玉を抑える要の駒であるのに対し、7八金は相手の攻めを防ぐ駒なので攻め合いになった本局では価値の低い駒になっているのですね。振り飛車党がよく使う感覚です。

 

さくらはな。さんは内容も結果もパーフェクトでした。ぜひ早急に「二段に成れるかな?」を執筆していただきたいと思います。

 

 

このあたりで時刻は午前1時。進行的に少し押している感じでした。

 

うしさんとの将棋は下図のようになっていました。

 

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互角のさばき合いからこのあたりまで接戦という感じでしたが、この局面で▲4七同金としたのが素直すぎ、形勢を損ねたようです。ここでは▲5八金寄と陣形を立て直しておけばまだまだチャンスのある展開でした。

 

うしさんは中盤で素直すぎる手が出てしまうことがありますが、序中盤の研究量は誰にも負けないと思うのでこの調子で四段、五段を目指してもらえればと思います。

 

 ※追記※

うしさんの中盤の▲1六歩(打った手)は好手でした。青嶋先生も見えなかったと絶賛しておられましたね!

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※追記終わり※

 

◇2枠目対局開始!(午前1時15分)◇

 

ここから2時間目です。2面指しで、お相手はこういちさん(平手)と塩出さん(飛車落ち)。

 

塩出さんはいつも棋士女流棋士の先生方と飛車落ちで対局されている様子をよく拝見しています。定跡形を勉強されていることがわかっていたので、上手△3三桂型の定跡に組んで様子を見ました。

 

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角交換から△4四歩と打たれた図で、▲4四同銀!と捨てたのが強手。△同銀直に▲5六桂で攻めがつながりました。上手はできることなら銀を逃げたいのですが、△3三銀には▲4一飛成となってさすがにこれは持ちこたえられません。歩切れも痛く、下手好調の展開です。

 

基本的に駒落ちの上手は、手数が長引けばいいなと願っています。その方が上手の好きな形、技を出しやすい形に誘導しやすいからで、長引けば下手のミスも出やすいということもあります。なので、このように一気に決戦に来られると、多少の無理攻めでも(駒が少ない上手は受からないことも多い)上手は非常に嫌だなと感じていると思います。飛車落ちに限らず、駒落ちの下手を持たれる方は速攻を心掛けてみるといいでしょう。

 

 

少し進んで次図。

 

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△6二金と引くことで▲5二とを防いで我慢した上手に対して、ここで塩出さんの決断力の良さが出ました。ここから、▲3八金△同馬▲4四飛!△同銀▲5二と!(下図)

 

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派手な技の連続で、これが決め手になりました。多少駒損してでも上手玉に迫るという感覚が絶妙です。最後の▲5二とも、△同金に▲6四桂を見せており好手。手順前後で先に▲6四桂と王手しては△6三玉▲5二と△6四玉で上部に逃げだされてしまいますね。

 

この後も冷静に寄せた塩出さんの完勝譜となりました。最後の詰みもきれいだったので興味のある方は見てみてください。塩出さんはコツコツ堅実に努力して上達されている印象なので、2021年もこのままいけば角落ちにすすまれていることでしょう。

今回はみなさんお強くて手合い違いが多く、上手は泣いています(´;ω;`)

 

最後に残ったのがこういちさん(▲先手)との平手の将棋。

 

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風の噂に、こういちさんは嬉野流を好まれていると聞いていたので初手▲7六歩には驚きました。MCまるやまによると、最近は本筋の将棋に回帰しているようで、それはそれでうれしいニュースでした(笑)

図から▲7八銀と引いたのを見て、まだ体の中に嬉野流の名残が残っているのかなと思いました。代えて▲3三角成△同桂▲7七桂と、駒が前に出ていくのが個人的にはおすすめです。

 

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この将棋は終盤戦が見ものでした。一手争いの攻め合いになり、いま後手が跳ねた△4五桂は先手玉に対する詰めろでした。実戦はここで▲3三銀不成としたので、△4八角成から先手玉が詰んでしまいました。

 

上図では、守るなら▲5八歩と打って詰めろを消すのが冷静で、角や銀を渡せない後手は先手玉に有効な詰めろを続けることができません。たとえば、△4八角成▲同金△5九銀の詰めろには▲2二角で勝ちということです。こうなると先手玉は1手で2手の延命に成功したことになり、逆転です。

 

また、攻めるなら▲2二龍以下の9手詰もありました。これは後手が3三桂を△4五桂と跳ねたことで生じた詰みで、深夜2時の環境ではなかなか厳しいものがあったかもしれません。

 

こういちさんはいつもねこまどにデザートの差し入れを下さる聖人です。来年もどうぞよろしくお願いいたします。(意味深)

目指せ正統派!

 

 

◇おわりに◇

終わってみると感想戦も含めてぴったり2時になりました。

2時間はあっという間で、対局者のほか視聴者の皆さんのコメントや北尾先生、まるやまさん、よーしなさんほかのみなさんのおかげで楽しく過ごすことができました。

対局後はコメンテーターとして深夜の対局を盛り上げてみました。うるさすぎたらすみません。しかし疲労からか、6時ころにはほぼ無言になりましたので静かなのが見たい方はそのあたりからご覧ください(笑)

 

今回は棋士女流棋士の先生方、対局者・視聴者・北尾先生はじめねこまどスタッフの皆さんのおかげで盛会となりました。この場を借りてお礼申し上げます。

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