「これにてよし」からそのさきへ
今日知人に聞かれた局面から。
(先後逆ですが下が先手として扱います)
三間飛車に対する45歩仕掛け。
ここで45同歩はないか?との質問でした。
ここは42飛なら普通ですが、定跡に疑問を持つのはいいことです。
以下33角成で角交換をして同桂。
さらに24歩同歩同飛と飛車先を破って居飛車だんぜんよしです。
ここで22歩と受けられても、23歩や21角で居飛車の優位は動きません。
ただし今回聞かれたのはこのあと。
たとえば44角などと打たれると、理論的には先手が良くても実際にはごちゃごちゃされて逆転負けするというもの。この意見は私自身ひじょうによくわかります。
この「これにてよしから勝ちきれない」問題には2つの対処法が考えられます。
まずは、諦める方法。自分にはこの定跡本に書いてある指し方はまだ早いからと、早々に定跡手順を諦めて終盤力重視のトレーニングをするのがひとつ。これは結局、詰将棋をやることになると思うのですが、底力がつくという意味で非常に効果的です。少なくとも付け焼き刃の知識で知ったかぶりをするよりかは潔いです。
もう一つは、中盤からの勝ち方を学ぶ方法。
中盤に優位を築いた方には、2つの勝ちパターンがあります。まずは短距離走抜き去り方式。
将棋はざっくり言って、どちらの攻め駒が先に相手玉に届くかというゲームと見られるので、中盤のリードを保ったまま一気にゴールまで駆け抜ける勝ち方があります。これは横歩取りのようなさわやかな斬り合いの将棋に多い印象。
もう一つは、真綿でじわじわ方式。つまり、少しのリードを保ったまま他の箇所で戦いを起こさずに収めることで、徐々に最初のリードが顕在化するだろうという考え方です。大抵はそこで相手が暴れてくるので、その無理攻めを討ち取っていきます。言い換えれば打たせて取るピッチング。
今回の例だと、23歩のあとの、23同歩同飛成44角という変化が質問者さんの気にかかったようです。
ここで、相手の角に99角成とさせる手はないでしょう。相手の無理攻めを摘み取るスタイルならば66角同角同歩として対抗し、これで当分振り飛車から手がありません。
44角に単に66歩もあります。
質問者さんはそこで55歩同歩同角が気になったようです。
↓
たしかに55に角を出られると、紛れる可能性が高くなります。戦いの場所が増えてしまっているからです。
ということで66歩55歩には47銀をおすすめしておきました。
以下56歩には同銀右で、手順に遊び駒が使えてうはうはです。実戦的にはここで振り飛車も46歩などと暴れてくるのでしょうが、それを討ち取れれば楽に勝てます。
それが面倒なら最初から44角に66角とがっちり受けましょう。
話が長くなりました。
勝ち方の話、これにてよしからの考え方はまた詳述します。
とりあえず参考図書。形勢判断は必須技術です。深浦本はまさにこの質問者さんのニーズを具体化した、当時画期的な本でした。