【定跡】角換わりでじゃんけんする(1)
角換わりじゃんけんの法則のはなしをごく簡潔に説明します。
後手番が一手損をしない、いわゆる正調の角換わりのおはなしです。
角換わりにはおおきく、腰掛け銀、棒銀、早繰り銀の3つの戦法がありますね(これを知らない場合は観る将のお母さんに聞いてみよう)。ちなみに右玉は万能選手なので今回は登場しません(知りたい場合は身の回りの青嶋先生にきいてみよう)。
これら3つの戦法には相性があります。すなわち、「(1)棒銀には早繰り銀、(2)早繰り銀には腰掛け銀、(3)腰掛け銀には棒銀」という対抗策が有力とされています。
【基本図】
(1)棒銀には早繰り銀
基本図から、▲25歩△33銀▲27銀と棒銀を目指してみます(太字は本手順)。
これには△74歩~△73銀と早繰り銀に組むのが好形。
さらに▲15銀と進出されて後手困ったようですが...
ここで△54角が名手。
さらに▲24歩だと△同歩▲同銀に△27歩で試合終了です。
以下▲33銀成△28歩成▲32成銀△同飛で後手が大きな駒得です。
ですので戻って、△54角には▲38角として△27歩に備えます。
ここで△44歩が間に合うのが定跡の仕組み。どういう意味かというと...
図以下、▲24歩△同歩▲同銀△同銀▲同飛に、△33金が成立。
先手の飛車は成れません。これにより2筋方面は互角の取引で収まります。
このとき、左辺に注目しましょう。▲25飛△24歩▲28飛などとおさまったとき、△64銀と△54角(八方角)の相性が抜群です。これはすべての駒が抜群に働いて、難しいながら後手不満ありません。
(2)早繰り銀には腰掛け銀
基本図に戻って、▲36歩と早繰り銀を見せれば後手は△64歩~△63銀からの腰掛け銀で対抗。
以下一直線に先手が攻めようとすると...
だいたいこうなります。▲46銀に代えて▲26銀だと棒銀に戻りますね。
ここから気になるのは▲35歩の仕掛けですが...
△35同歩▲同銀△34歩とあっさり対応してしまって...
なおも▲24歩から攻めてくれば、次図。
王手飛車がありますね。
ということで戻って、いきなり▲35歩はやりすぎになります。
代えて▲68玉や▲16歩と手を入れれば、△44歩が間に合う仕組みになっています。
なにを言っているかというと...
図以下▲35歩がいちおう防げているのです。以下△45歩として(△35同歩▲同銀△86歩からの継ぎ歩はぬるい)
▲34歩△46歩...a▲33歩成△47歩成▲32と の攻め合いは後手金損となり、一見まずそうですが…
ここで△46角とど急所に角が打てるので、一局ながら後手持ち。
※ソフトの評価はほぼ互角でした。ただ、a△46歩の攻め合いでは△34同銀と穏やかに指す手もあるでしょう。
(3)腰掛け銀には棒銀
これはいままでのことから自明ですね。棒銀には早繰り銀、早繰り銀には腰掛け銀なのですから、自分を有利にするには棒銀にするのが一理ある選択。この変化は有名なので割愛します。
ただし、先手腰掛け銀に対する後手棒銀も決して有利になるというわけではなく、むしろ腰掛け側がやや作戦の含みが多く(右玉など)、より好まれるようです。このへんは語りだすと長くなるのでまた別の機会に回しましょう。
(注意点)以上の変化は、それぞれの作戦に対抗しやすい形というだけであって、実際にやってみれば局面自体は非常に難解です。興味を持った形を研究してみてくださいね。
角換わりじゃんけん(2)では相早繰り銀も扱う予定です。
6月の新刊紹介
梅雨ですけど、はりきっていきまっしょい。
6月上旬の棋書紹介。主要4冊をチェックしました。
1. 『羽生善治永世七冠 必勝の一手』森けい二(日本文芸社)
羽生二冠が永世竜王を獲得したあとに森先生みずから羽生先生に諒解を得て編集された、実戦次の一手集。森先生による羽生本はもはやおなじみですね。
羽生先生の最近の実戦を以下の10章に分類。「横歩取り(先手・後手)」、「角換わり腰掛銀(先手・後手)」、「矢倉(先手・後手)」「対振り飛車」、「振飛車」、「角換わり棒銀」、「雁木その他」。各章およそ10問で、合計100問。
中盤から終盤の入り口の問題がメイン。素直な手が正解な場合が多く、級位者にもおすすめできます。
これを繰り返せば実力の向上はもちろんのこと、羽生マニアへの道も歩むことができるでしょう。
2. 『【増補改訂版】将棋・序盤完全ガイド 相居飛車編』上野裕和(マイナビ)
5年前に出版された同タイトルの書籍を大幅に加筆した、序盤理解のためのガイドブック。
将棋の序盤をひとつのストーリーとして捉え、ほんのわずかな優位を掴むために繰り広げられる先手と後手のしのぎの削り合いを描きます。
具体的な手順は極力ひかえられ、また図面には矢印などが多用されているのが好印象です。
矢倉が(一時的に)衰退し、その代わりに雁木が台頭してきた現代将棋の模様を新章によって反映しています。
指す将必読、観る将must読の一冊。
3. 『コンピューター発!現代将棋新定跡』suimon(マイナビ)
コンピューター将棋、あるいは将棋ブログ界で多大な貢献をされているsuimonさんによる相居飛車の最新研究書。250ページちかい大著ながらお値段据え置きの新設設計。
「角換わり▲4五桂」、「角換わり▲4八金」、「雁木」、「相掛かり△7四歩取らせ」という4章構成です。 それぞれの節の結果図に、コンピューターソフトによる評価値を載せているのも画期的でしょう。
ソフトの評価値は、その後も正確に指し継げてはじめて使いこなせるという難物ながら、本書でそれぞれの手順の意味を知ることで、指し方に幅をもたせることが可能でしょう。
高段者向け。
4. 『心震わす将棋の名対局』後藤元気(大和書房)
観戦記者の後藤氏の作品を集めた選集。様々なエピソードとともに棋譜を鑑賞することにより、単なる符号の羅列としての棋譜とは異なり、より深い次元で対局を味わうことができます。
羽生二冠や佐藤康九段らトップ棋士はもちろんのこと、神谷八段や畠山成八段など、普段あまり棋譜が出てこないベテラン棋士の闘いと人間味あふれるエピソードも面白いです。
中盤の大事な局面で手の解説がなかったりするのは良し悪しですが、総じてお買い得な一冊と思います。
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6月後半は藤井聡太全局集や各種読み物が出る予定ですので、スムースに読みたい棋書を読み進めていきましょう〜
【四間飛車基礎】将棋ルームより
今日の将棋ルームの参加者の方と指した将棋から。
参加された皆さまお疲れ様でした。
参加者の方が先手で、四間飛車を得意戦法にしたいというケースです。
今回は右銀急戦を採用してみました。
限られた対局時間の中で再現率の高い局面をお伝えできればと考えながらいくつか指導プランを用意しています。
ここから▲56銀とすると、以下△75歩▲65歩のときに、△77角成▲同桂△53銀が好手。
この瞬間、次の△76歩の取り込みと△86歩の飛車先突破が同時には受けづらいです。
最初の△64銀には「戦いの起こる筋に飛車を振れ」の格言通り▲78飛が常套手段です。また、この手では▲56歩として、△75歩の瞬間に▲78飛でも良いでしょう。
四間飛車においては、居飛車からの仕掛け△75歩を▲同歩と取るのは非常に限られた場合しか成立しません。つまり、△75同銀として居飛車の銀が5段目に来るのが非常に好形なのです。
さて、本手順に戻って次の難関は△76歩▲同銀△72飛の局面。
ここでは銀取りを受ける必要がありますね。
今回の場合は▲88角という手をご存知だったのでこの手順を進めていきます。
なお、代えて▲65歩や▲67金も有力です。前者は『四間飛車を指しこなす本1』(藤井)、後者は『四間飛車破り』(渡辺、なお左銀急戦だが)に詳しいです。
▲88角には△65銀という派手な手もありますが、今回は△77歩という軽妙手を放って応手を問いました。
初見だと少し焦りますが冷静に見ればここは▲77同飛の一手ですね。
以下△66角のときに...
▲67銀が定跡の教える好手。この手を知れば△66角は怖くありません。
ここから△77角成▲同角△22銀となった局面は...
1.手番 振り飛車
2.玉の堅さ 振り飛車
3.駒の効率 互角(盤面左にあるお互いの銀・桂を見比べる)
4.駒の損得 飛車 vs 角(互角 or やや飛車が得)
ただし、この局面では斜めのラインのスキが居飛車陣に多いので個人的には振り飛車を持ちたいです(具体的には▲83角)。対して美濃囲いのほうに意外と飛車打ちのスキがないのです。
以上の変化は数多くの定跡本で紹介されている、ある種の常識とも言えるので、四間飛車党の方は記憶しておくと良いでしょう。
最近の本だと藤井九段の『四間飛車上達法』に載っているという情報がありました。難しい本ですがこちらもぜひ。
最後に、四間飛車とは関係ないのですが、上達の壁にぶち当たっている方とお話をする中で思い出した私の好きなブログ記事を紹介しておきます。以前にツイートでもご紹介しましたが。
読みの技法 番外編 県代表クラスになる為のある一線 | 将棋・序盤のStrategy ~ 矢倉 角換わり 横歩取り 相掛かり 中飛車 四間飛車 三間飛車 向かい飛車 相振り飛車 ~
今日指した将棋から
ひさびさに参加した研究会の将棋より。
強い人と、すごく強い人がいっぱいいました(小学生並みの感想)。
1局目は私の後手でした。相手は強いお兄さん(ハタチらしい)。
前の対局では一間飛車をやられていたので警戒していたのですが、相手がそれ以上に私のクルクル角を警戒した序盤戦で、結局はよくある形に。
上図から、△64歩▲46歩65歩に▲55歩が深遠な一手。
ただですが、△55同歩には▲65歩、△同角には▲56銀を用意しています。▲56銀には△66角とした局面がまた難しい...
コンピューターに聞けば簡単なのでしょうが、我々レベルでは簡単に結論が出せませんでした。そういえば私のShogi GUIからは空き容量の関係でソフトを抜いてしまったのでいまは評価値が出せないです笑
実戦は▲55歩に△同歩とし、先手も▲65歩と取り返して穏やかな展開に。
同角の変化は3年ほど前に社団戦で指してうまく行かなかった感触があったので回避しました。
ここで、安易な気持ちで△86歩と突き捨てたのですが、悪手でした。
以下▲86同歩△54銀▲66銀△53銀右のときに...
一歩余計に渡したので▲56歩△同歩▲55歩と位を取り返されたらなかなかにだめでした。
歩の突き捨てに厳しいのは相居飛車という先入観がありました。これからは気をつけます。
実戦は▲47金と穏やかな順。とはいえゆっくりしていると今度こそ55の位を奪回されるので△85歩▲同歩△73桂と動いていきました。
ここは先手も手が広いところで、力が試されます。
実戦の▲58飛以外にも、▲56歩や▲88飛も検討したいところ。持ち時間20分の将棋だったので先手も決断よく来ました。以下△65桂▲同銀△同銀▲55飛と進展。
気持ちよく飛車をサバかれました。これを△55同角と取ると▲同角で本格的に収集がつかなくなります。ここは△54銀引で我慢しました。ここで形勢判断をすると、居飛車の右桂が銀になって駒台にいる計算なので、ゆっくりした展開になれば良くなるかな、と思いました。
実戦は▲54同飛から攻めかかってきましたが、やや乱暴でなんとか受けきることができました。仕掛け周辺は研究のしがいがありそうです。
負けた将棋もご紹介。相手は同い年の強いお兄さん。
私が先手でした。
序盤の駆け引きの中で先手玉が6八にいたのが気に食わず▲79玉と移動したのですが、この瞬間△65歩と突かれて▲49飛と▲79玉の相性の悪さを突かれました。
ここは▲46銀と▲45歩で迷いましたが前者はタイミングを見て△45歩を食らう未来が見えてさすがに断念。
▲45歩△同歩▲65歩△同桂▲33角成△同桂と進展。
読み筋通りとはいえ、ここで▲68銀に△66歩が利くのがシンプルな誤算。
以下▲同銀△38角▲48飛△56角成▲67銀に△46馬の王手桂取りがあります。
と書こうと思っていたら最後の▲67銀に代えて▲67金右で耐えそうですか。
しかし最初の△66歩で単に△38角から△27角成ぐらいで悪いでしょう。
とはいえ本譜の単に▲66銀右に比べればだいぶましでした。▲44歩△同銀▲71角の楽しみもありますし。
以下は着実に負かされました。
負けたとはいえ、相居飛車の仕掛けは盤面全体を考慮に入れる必要があるのが難しいですね。同時にその難しさが楽しみでもあるので、今後も研究していきたいと思いました。
まえがきから見えてくるもの【河出書房新社編】
前回の続き、今回は河出書房新社のタイトルを紹介します。
この出版社は最近も羽生先生のシリーズでいろいろと名作を出しているのですが、今回は以下の書籍をピックアップしてみました。早速ご覧ください。
本書『-戦いの絶対感覚』では、私の実戦から、私らしい戦い方のポイントを選び出し、それぞれじっくり解説してみました。読みと同時に、私の考え方についてよりスペースを割きました。将棋の神様が見ても最善なはず、と信じていますが、皆さんの中には疑問を持たれることもあるでしょう。しかしそれはそれでいいのです。それが皆さんの個性となっていくはずです。
将棋の神様に見てもらっても差し支えない内容とのこと。どうですかこの謙虚と矜持。
私自身この本は何度も読んで勉強してきましたが、未だ本書の内容に疑問を持つ境地には至れていません。
初心者の時にはどう指してよいか解らないので自由に手が選べたわけだが、この手を指すと悪くなるということが解ってくると、どう指すべきか解らなくなる、迷ってしまうという現象が起こる。そんな場合の指針になれば著者として嬉しい。
上達の上で「悪くなることがわかる」→「対策を講じる」は2つの異なる段階ですからね。初心者の気持ちを組んでくれているわけですね。読者として嬉しい。
(前略)そうした戦法の流行が続くことによって、現代将棋の感覚は以前とは大きく変わってきた。序盤のスピード感覚。序盤の一手の重要性。序盤から終盤へと進む流れの速さ。中終盤をより直線的に考える感覚。それらは昔の将棋観とは全く違ってきた。私の将棋観も同じように 変わってきた。
ただ、そうは言っても、将棋の中には絶対的に変わらない基本的な感覚もある。
変わるものと変わらないもの。将棋の常識を変え続けてきた先生だからこそ重みを持って言える言葉だと思います。
「今の将棋の本って、難しすぎますね」
このなにげない一言を私が聞いたのは、五年ちかくも前だっただろうか。それもでもふと、そう感じることもあったのだが、身近なアマチュアの方にストレートにこういわれて、私はドキっとしたのだった。
以来、定跡本が出るたびに、私はこの言葉を念頭に置いて目を通すようになった。そして出た結論は、「やっぱりこりゃ難しいぜ」だった。
(中略)そこで私が立ち上った。「初段向けの易しい本にする」「職人感覚を言葉にする」。この本は、このふたつのコンセプトで始まった。
すべての棋書のまえがきを考慮してもトップテンに入る名文です。アマチュア目線に立ってくれる本がいかにありがたいか。
あの飛車をサバく快感。あの左の桂馬をピョンと跳ねるなんともいえない気持ち良さ。あれこそ、将棋の醍醐味といってもいいだろう。
実際、私はゲームマニア(将棋指しなんてだいたいそうです)なので将棋の他にも色々なゲームをするが、あの三間飛車の捌けた時の感じは、ちょっと他のゲームでは味わえない。
ほらほら、いますぐ三間飛車が指したくなってきたでしょう?
プロなら「こんなもの終っとる」と言って目もくれないであろう局面から分り易く解説するのは、思ったよりも簡単なことではなかった。我々プロは、豊富な経験にもとづく大局観をホントに頼りにしているんだなあ、と何度も感じさせられた。
プロにしてみれば常識でも、アマにしてみればそこは高い山のかずかず。麓まで降りてきてくれるプロの存在がありがたいですね。この「ホントに勝てる」シリーズ三部作は本当に不朽の名作です。
「四間飛車の極意を一言で言うと何でしょうか?」
ファンの質問に私はいつもこう答えています。
「相手の力を利用して、投げる、でしょうか」
四間飛車の答え、ここに書いてありましたね!
ちなみにこれの3巻のまえがきには、「第1巻、第2巻、第3巻とすべてを完璧にマスターしたあなたは、確実にアマチュア四段の実力はついているはずです。」とのお墨付きが出ています。未読の方はぜひ。
他にも紹介したい名著がたくさんあるのですが、今回はこの辺にしておきます。
次回はマイナビを扱う予定ですが、なにぶん冊数が多いので、どれを紹介したものかいまから思案中...
【補足】書体について
以前の記事で、菱湖(りょうこ)という書体をプッシュしました。
菱湖(巻菱湖とも)は最近とみにその人気を増している観があります。
マイナビ出版の棋書の表紙の駒は、この書体以外使われていないのではないでしょうか。
こんな感じで。
綺麗で見やすいのが良いのでしょうね。
【菱湖】
ほかには錦旗(きんき)が有名でしょう。参考文献によれば「大橋本家に伝わる後水尾天皇の書を豊島龍山が筆写した」のがはじまりだそうです。
ちなみに菱湖のほうは、「新潟の巻(現・新潟市)で生まれ、書道の手本を残し「幕末の三筆」と謳われた江戸後期の書家である」とのこと。
【錦旗】
他には、能筆家で知られた公家の水無瀬家が16世紀末に残した書体をもとに後世の駒師がアレンジしたとされる(参考文献)水無瀬書も有名で、現在ひろく流通するプラ駒にもそのデザインが採用されています。
【水無瀬】
また、これらの3書体に源兵衛清安(げんべえきよやす)をあわせた4つがいわゆる四大書体です。
【源兵衛清安】
源兵衛清安は江戸時代から伝わる古い書体であるものの、その詳しい出自はわかっていないそうです。面白いですね。
ところで、以前の記事で紹介したデラックス将棋盤が発売になりました。
将棋会館に実物がサンプルとして置いてあったのを見たのですが、サンプル写真とそう変わらぬ見た目で(指し心地はわかりませんが)まだ盤駒をいない方には強くおすすめできるいい商品と思いました。
そして、この商品は盤と駒のセット販売なのですが、amazonを調べたところ、駒の単品販売があるようです。amazonを見たところ発売は今月末らしいです。ツゲではないとはいえ四大書体の木製の駒が3千円台半ばで買えるのはいい機会ですね。
是非チェックしてみてください。
【参考文献】『将棋駒の世界』増山雅人
将棋系出版社について
棋書のまえがきに関する先日の記事について、何人かの方から好意的なご評価をいただきました。ありがとうございます。
まえがきからわかること【浅川書房編】 - みずたま将棋ブログ
そのときに紹介できなかった中原先生の著作のまえがきをあらためて紹介します。
○はしがき
読書百遍、義おのずから通ず、という。プロ棋士の実戦譜はけっしてやさしくはない。やさしくはないが、ちょっとでも強くなりたい、あるいはどうしても強くなりたいというかたにはぜひお勧めしたい。プロの実戦譜を並べることをお勧めしたい。
一度並べたぐらいでは、細部の変化、奥の深さまではなかなか理解していただけないだろうと思う。初心のかたにとっても、有段のかたにとっても、むずかしさという点では、あるいは同じかもしれない。だが、何度も並べ、盤上に再現していただければ、きっと何か得るものがあるにちがいない。
中原誠「中原自然流実戦集」
いい文ですね。中原先生にこう言われてしまうと自然に勉強のやる気が出てきます。
さて今日は軽めの話題。
棋書に欠かせない、出版社をいくつかご紹介。
1. マイナビ出版
囲碁・将棋・麻雀出版界隈では知らない人はいないほどの有名企業。2015年にマイナビから分社化した。
全国各地どの書店の将棋コーナーを覗いてみても、半分くらいはここの本が占めるのではないだろうか。
「将棋情報局」を始めとして、将棋関連の情報基地としても活躍。「将棋年鑑」はど、日本将棋連盟名義の作品の出版も請け負う。
【代表作】「よくわかる(戦型)」シリーズ、戦型別名局集シリーズ、「永瀬流負けない将棋」など多数
2. 河出書房新社
国立競技場(跡地)の目の前、すなわち、将棋会館から徒歩数分の好立地でも知られる出版社。日本文学全集や「サピエンス全史」など人文・文芸が多いが、将棋本にも理解がある。
若き日の浅川浩(後述)が腕を磨き、かつ振るったことでも知られる。
【代表作】 「羽生善治の将棋の教科書」シリーズ、「四間飛車を指しこなす本」シリーズ(藤井猛)、「読みの技法」(島朗ら)
3. 浅川書房
マイコミ(当時)、河出書房新社と渡り歩いた浅川氏が設立した将棋専門出版社。東京・本郷に所在。棋書およびその執筆者に対する深い理解から、納得の行く時間をかけて生み出される本の数々は、文字通り名作揃い。
浅川氏についてはインターネット上でも彼についての記述が散見される。
【代表作】 「上達するヒント」(羽生善治)、ハンドブックシリーズ(浦野真彦)、「寄せの手筋200」(金子タカシ)など多数。
4. 池田書店
東京都新宿区に拠点を置く、実用書に力を入れる出版社。昭和期からコンスタントに囲碁将棋の本を出しており、棋書出版不況の時代も業界を支え続けてた。囲碁の「手筋の基本」シリーズが最近のヒット。将棋ではこども向けの本が読みやすく人気だ。
【代表作】「羽生善治のこども将棋」シリーズ、詰将棋シリーズ(飯野健二)など
5. 創元社
1892年創業の老舗。人文・文学の実績と信頼が厚い。将棋に関しては「初段を目指す将棋」シリーズなどでお父さん世代の棋力向上に一役買った。級位者向けに狙いの手順がわかりやすい戦術書が好評。
【代表作】「初段に勝つ矢倉戦法」(森下卓)、詰将棋シリーズ(高橋道雄ら)、「プロ棋士という仕事」(青野照市)など多数。
6. 木本書店
プロ棋戦の棋譜をうまく本に落とし込む、キュレーションメディアの意味を持った出版社。森けい二九段が気を吐き多数出版している。
【代表作】 「将棋戦法小事典」(鈴木輝彦)、「必勝!! 四間飛車1,2」(森けい二)など
7. 実業之日本社
森信雄先生が事実上独占的に将棋書を担当している出版社。終盤力の向上には欠かせないラインナップが目白押し。
【代表作】「逃れ将棋」シリーズ(森信雄)
以上、いろいろな出版社を紹介してみました。ほかにも、加藤治郎「将棋は歩から」シリーズで知られる東京書店や、惜しまれつつ倒産した山海堂(高橋道雄「手筋の教科書」、佐藤康光「居飛車の手筋」などで有名)など、すべてはここには挙げきれないほど多くの企業が将棋出版に携わっています。
みなさんも自分だけのお気に入りの出版社を見つけて応援してみてくださいね。