こども教室の現場から
将棋教室のこども教室を担当する中でいろいろなことを経験します。
それが教え方の基礎になるのですが、今日は事例をベースに教え方のコツをいくつかご紹介します。
事例1 将棋って何?の子
いわゆる学童の教室でこどもたちと将棋をすることがあります。月に2回という限られた時間でどれくらい楽しんでもらえるかに苦労します。
日ごろ家族や友だちと指して、なれている子ならば、1・3手詰を出したり6・8枚落ちを指したりすればいいので楽なのですが、中には「将棋ってなに、やってみたーい(どんなゲームかは知らないけど)」みたいなケースもあります。
そういう子には以前記事にした飛車角の追いかけっこをやります。
飛車と角と玉の動きだけを教えればいいので楽でしょう。
他には、青空将棋(通常の配置から歩をすべて取り除く)やその変種、またはさみ将棋もいいと思います。
【青空将棋は駒をたくさん取れてたのしい】
この事例の子の場合、飛車角の追いかけっこをさせるのですが、先生の玉を取るという目的をうまく理解できずに、飛車をブンブン回しては「はーい先生、うごかしたよー」の嵐。
そんな中あるとき思いつきで、「先生まちがえてそっちの飛車(の利き)の中に入っちゃったー」とあえて自殺手をしてみたらうまく玉を取ってくれ、それ以降、飛車、角、次いで龍と馬の利きをマスターしてくれました。
【あーやっちゃったよー】
大人は悪気なく「将棋は相手の玉を取ったら勝ちだよー」といいますが、「玉を取る」と「玉を動けない状態(詰み)に追いやる」の間には大きな距離があるんだなあと感じた次第。大人の皆さんはどんどん取られていきましょう。最初は抵抗がありますけどね。
事例2 どうぶつしょうぎをやりたいな
3歳位の男の子。お兄ちゃんがどうぶつしょうぎを習っているのを見て自分もやりたくなった模様。3才くらいだと一般に自他の区別がつかないことも多く(鏡の中の自分が誰かわからない状態、発達の面でけっこう興味深い)、教えるのはやはり苦労が多いです。
大人は無意識に手番制、自分の駒と相手の駒の区別、取るという動作(自分の駒は取れない)、取った駒を使うということなどを自明のこととして話しがちです。
今あえてスルーしましたが、駒ということばも幼児にはわかりませんし。
相手の駒と自分の駒がわからないのにくわえ、初期配置だってわからないのです。
そんな子には根気強く、また優しく大人が指導してあげるのも大事ですが、それは押し付けになってしまうこともあります。こどもの目をよく見つつ、無理そうだと思ったらどうぶつしょうぎの駒を裏返して神経衰弱をしたり(みずたま手筋)、積み木にしたりと遊ばせてあげましょう。まずは楽しんでもらうことからです。
事例3 こども教室
5,6歳から小学校低学年にもなると、日本語が通じるようになり、ある程度おちついて将棋を楽しめるようになります。この辺からは1手詰をといたり囲いや戦法を覚えさせたりと、「先週学んだことを今週も覚えているかもしれない」と期待してもいいでしょう。
棒銀や美濃囲いや矢倉囲いなど、最初のうちはあるていど形の暗記をさせることも必要でしょう。実際に使うときに、「飛車がどかないと王様が美濃囲いに入れないぞ」とか「棒銀で進んでいったけど相手の歩に食べられてしまった」などと気づいてくれます。
教室にはさまざまなレベルの子がいて、年齢も進度も様々ですが、まずは「おねがいします」「負けました」「ありがとうございました」の挨拶ができること、レッスン中は課題に一生懸命取り組んで、騒いだりしないこと、使った道具は自分で片付けることを念頭に指導しています。根底にあるのは相手への敬意でしょう。
最近は、「ヒントは全部、将棋盤の上にあるんだからよく見るんだよ」がミニ口癖になっています笑
ということでとりとめのない話になりましたが、最終的には子供のことをよく見て何をしたがっているかよく聞く耳を持ちましょうという話。