【棋書】居飛車本格派になる10冊(定跡編)
初段を目指す級位者向けに、居飛車を指す上で知っておきたい定跡を掲載した棋書をご紹介しましょう。今回は定跡編で、次回は棋譜並べ編の予定です。
10冊すべてを読む必要はないかもしれませんが、興味を持った1冊を繰り返し読んでマスターするのがいいでしょう。
【総論】
定跡の仕組みを広く浅く概観する総合定跡書たち
※初心向け
羽生先生が監修する定跡入門書。将棋にはどんな戦型があるのかを知るために最適なカタログ的な一冊。相居飛車から相振り飛車まで、各定跡の有名な変化を考え方とともに紹介しています。類書に「羽生の法則3」(文庫版)があり、これは玉の囲いと仕掛けについてプロの実戦例とともに解説しています。
(2)上野裕和『【増補改訂版】将棋・序盤完全ガイド 相居飛車編』(マイナビ)
プロの将棋における序盤の流行の変遷を級位者に分かりやすく解説。解説盤面に矢印や色分けを多用して書籍になじみにない方でも安心して読めると思います。将棋が一つのストーリーとして見えてくるのが興味深いです。同著者による『【増補改訂版】将棋・序盤完全ガイド 振り飛車編』も必見です。
(3)佐藤慎一『将棋・基本戦法まるわかり事典』(マイナビ)
相居飛車の基本である矢倉・相掛かり・横歩取り・角換わりを指すにあたって、必ず押さえておきたい基本変化を紹介した一冊。全ての変化を覚えるのは有段になってからで十分ですが、なぜこの局面でこう指すのかという、棋理の一端が垣間見えることでしょう。
【各論・相居飛車】
※初心向け
居飛車は自ら作戦の主導権を握りに行く構えですが、相手の作戦に応じた柔軟な対策が必要になります。その点で棒銀はいつでも使えておすすめ。本書は初心者から初段まで幅広くおすすめできる好著で、相掛かり・矢倉・角換わり・対四間飛車を網羅しています。
(5)塚田泰明『角換わり 初段の常識』(マイナビ)
ここ数年で数段階ブラッシュアップされた角換わりを大まかに解説。なぜかつての先後同型や単純な棒銀は流行っていないのか、相腰掛銀の最先端はなどなど、仕掛けにまつわる新しい常識を授けてくれる必読書です。私自身、発売日に購入して、興味深く1時間で読み通してしまいました。
(6)西尾明『よくわかる角換わり』(マイナビ)
(5)の塚田先生の本が現代の常識とすれば、この西尾先生の本は昭和から平成、すなわち近代の角換わりの常識を網羅した名著です。当時はやっていた一手損角換わりに関する章があったりとやや時代を感じさせますが、棒銀や早繰り銀の受け方など、いつまでも色あせない常識が得られるでしょう。なお、この「よくわかる」シリーズは他に相掛かり(中座)、横歩取り(野月)など名著揃いです。
相掛かり定跡に関する本は決して多くはないですが、直前に紹介した『よくわかる相掛かり』(中座真)とともに、本書は双璧です。出版は2010年と古いのですが、昭和の時代から定跡化されてきた相掛かり戦法の▲26飛型と▲28飛型を必要十分な量だけ収録した名著と思います。なお、この「最新」シリーズはほかに△8五飛戦法(高橋)などがあり、これも名シリーズです。
相居飛車の苦手意識を払拭するには、まず得意戦法を持ってライバルを倒す経験が重要かもしれません。その意味で横歩取りの(急戦)△3三角戦法、△4四角戦法、△4五角戦法は初段レベルでの必勝戦法になるポテンシャルがあります。将棋世界誌に連載されていた安心のクオリティをお楽しみください。飯島先生には他に相横歩取り、横歩取り△2四飛ぶつけの著書もあります(日本将棋連盟刊)。
【各論・対振り飛車】
(9)渡辺明『渡辺明の居飛車対振り飛車Ⅰ・Ⅱ』(NHK出版)
対抗型の序盤を解説した級位者向けの概説書。1巻では四間飛車以外の振り飛車を紹介しています。なぜ現在ノーマル中飛車・三間飛車には穴熊が主流なのかを、具体的な手順とともに理解できるでしょう。2巻は藤井システム前後の歴史と対策を広く網羅しています。序盤研究の第一歩としておすすめ。
(10)渡辺明『四間飛車破り』(急戦編・居飛車穴熊編)(浅川書房)
「将棋に勝つには得意戦法を持つのが手っ取り早いです。アマの将棋で時代を問わず根強い人気を誇るのが四間飛車であることを考えれば、急戦を用意しておくのが一番簡単だ。ましてや居飛車穴熊の時代とあっては、四間飛車側が正確に対応しきるのは難しい。」(#今日の棋書 ツイートより)
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我流の将棋ではいつか限界が来ます。
怖いのは、将棋とはそのていどのゲームだと誤解されてしまうことです。
理論の勉強と実戦対局をバランスよくこなして快適な将棋ライフを過ごしてくださいね。