オールラウンダーになろう
みずたまです。今日も書いていきましょう。
オールラウンダーになるため棋書をちょろっと紹介する予定です。
最近わたしは初段周辺の方、これから初段を目指す方と盤をはさむ機会がたくさんあって、いろんなことを思ったり思わなかったりしてます。
そんな日々の中で強く思うのは、いつも将棋に対する興味や自分なりの得意戦法を持っていて、強い人に会えばそのときに疑問点をたずねるというスタンスのかたが強くなるということ。質問はより具体的なほうが答えやすいですしね(「〇〇という戦法の狙いがわからないので教えてください」)。自分なりの形や理解があって、そのうえで質問するというスタンスがいいような気がします(「私はこう思うのですが、あなたはどう思いますか」)。ここ数か月で目を見張る成長をとげている方を何人か目にしています。
世の中には数多くの指導者や教本がありますが、結局その機会を生かして強くなるのは本人の努力だったりします。その傾向は詰将棋でもっとも顕著でしょう。どれだけいい問題集があっても、結局それを解くのは本人に他ならないのです。もちろんほとんどの方は普段の仕事が忙しくて...というケースでしょうから、それを踏まえてより効率的な手段を伝えるのは指導役の仕事ではあります(もちろん本人もやる)。
蛇足ながら付け足すならば、将棋の勉強でもっとも基礎的かつ重要なのは詰将棋でしょうね。これはあのマズローさんも言っていたとかいないとか。上達に近道はないですね。蛇足ついでに言うと、私は最近になってようやく「自分の好きな勉強法を取り入れると強くなる」という言葉の意味が理解できるようになってきたような気がします。
さて前置きが長くなりました。今回のテーマはオールラウンダー。
将棋を指すうえで何に喜びを見出すかというのは人によると思います。相手に勝つことが最大の喜びということにはおおむね異論はないでしょうが、その性質には大きく分けて2つあるように思われます。
まずは自分の得意戦法を相手にぶつけて倒すことが一つ。そしてもう一つは、相手の得意戦法を丁寧に受け切って勝つことです。イメージでの話ですが、前者の代表は藤井九段の四間飛車や鈴木九段の中飛車、加藤九段の棒銀など。後者の代表は羽生竜王や...他はぱっとは思い浮かびませんが、中原十六世名人の自然流でしょうか。自分の得意な形を指すのは、どちらかというと振り飛車党という印象があります。戸辺先生の戸辺攻めもそのような方向性でしょう。
すこし個人的な話をすると、私は羽生先生や谷川先生の棋譜を勉強してきたので、どちらかといえば後者の、相手にやりたいことをやらせる指し方に喜びを見出すようになりました(勝てるかどうかは別問題として)。羽生先生の最近の将棋では、3年前の王将戦挑戦者決定戦の久保九段との将棋が印象に残っています。久保先生得意の先手中飛車を受けて立って、最後は美しくまとめました。
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オールラウンダー的な将棋も、もちろん自分から攻めて勝つこともあります。いずれにこの王道の指し方は、いずれにしても勝ったときに格好いいのだと私は思います。相手からしても、自分の得意な形を指して負けた時のほうが、自分の将棋を出せぬまま一気につぶされたときよりも納得がいくのではという気がします。(「棋は対話」という言葉の私の解釈の一つ)
もちろん多くの戦法を指しこなすためには様々な定跡、すなわち「対話の仕方」を学ぶ必要があります。その点でオールラウンダーを目指すのは大変なことでしょう。
居飛車党になりたい?簡単だよ!
— みずたま (@go_tom_89) August 28, 2018
今なら角換わりと横歩取り青野流と相掛かりと雁木と早繰り銀対策と角交換振り飛車対策とノーマル振り飛車対策とトマホーク対策と四間飛車穴熊対策とゴキゲン中飛車対策の一直線穴熊と超速さえ覚えておけば一応戦えるし、あとは筋違い角とか角頭歩とかは実力で倒せばお
全ての定跡を完璧に覚える必要はありません。そもそもオールラウンダーになることイコールすべての序盤を暗記することとも違います。戦法や戦型には、たとえばさばきや厚みの概念など、それぞれ特徴があり、そのツボを押さえることが中盤の優劣につながっていきます。その点で序中盤をひとつの物語のように理解することが上達につながるでしょう。
私自身は、駒組みと仕掛けを読み解くことに読書に似た楽しみを覚えます。読書の仕方も1冊を何度も読むときと多くの本をまんべんなくのときがありますよね。
最終的には様々な戦法の定跡書(各論)をたくさん読み、指しこなすことでしょうが、それも大変なので。初段を目指す方向けに、少ない冊数でいろいろ概観できる棋書を何冊か処方しておきますね。
定跡書
- 長岡裕也『全戦法対応 将棋・基本定跡ガイド』 10級前後 次の一手形式
- 羽生善治『羽生の法則3 玉の囲い方・仕掛け』 棋譜ならべの萌芽
- 羽生善治『羽生善治の定跡の教科書』 子どもも読めるフリガナ付き
- 週刊将棋編『将棋・ひと目の定跡』 子どもから大人まで繰り返したい
- 森下卓『将棋基本戦法 居飛車編 振り飛車編』 やや古いが役に立つ
- 佐藤慎一『将棋 基本戦法丸わかり事典』 相居飛車の基本 初段向け
- 久保利明『さばく!振り飛車教室』 振り飛車の考え方がわかる ★5つ
- 羽生善治『上達するヒント』 将棋全般の考え方 ★5つ
興味が出てきたら、少しずつ各論を自分の頭で集約するスタイルへ。
シリーズ
- 将棋の教科書シリーズ(マイナビ)
相振り飛車の教科書は私にも勉強になりました。
考え方と具体的な指し方がいいバランスでまとまっていていいシリーズです。以前、同社から「よくわかる」シリーズが出ていたのですが、絶版のものもあるのでこちらを紹介。よくわかるシリーズのほうがややレベルは高いです。それから、初段以上の人なら「羽生の頭脳」もいまだに良書だと思いますよ。
棋譜集
先述の通り、羽生先生や谷川先生、中原先生の棋譜を並べましょう。棋譜並べはどの棋力帯でも有効ですが、特に有段者はマストですね。藤井七段の棋譜は対振り飛車の勉強にもなります。
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谷川浩司全集
昭和編はプレミアムブックスで復刊しました。平成版は古書でどうぞ。
- 中原誠名局集
いろいろな版がありますが、こちらもマイナ版がPB復刊になりました。