1月の新刊
2月の新刊が押し寄せてきたので、遅ればせながら1月の新刊おさらい!
★★★★☆
elmo囲いを解説した本として有名だが、6章あるうちの1章に過ぎない(第6章は実戦編)。そのほかの4章はコーヤン流や石田流組み換えなどの並定跡をまとめたもの。
斬新な新研究というよりかは、よくまとまった教科書のような本。有段向け。
★★★☆☆
玉方持ち駒制限や中段玉作品などで知られる森先生だが、この本はひさびさの王道詰将棋集。その名の通りはじめての詰将棋本としてもおすすめ。初級向け。
★★★★☆
著者が箱庭と好んで呼ぶ、駒数の多くないすっきりした作品集。
既出の作品が多いのが玉に瑕だが、果ファンの人もそうでないひとも必携の一冊。
高段向け。
★★★★☆
先後ゴキ中の最新研究書かつ概観書。先手中飛車対角道不突き型も収録。
ほぼすべての結果図が振り飛車よしなのでリテラシーをもって読む必要がある。
先日の王将戦の変化なども、早めに打ち切られているのが気になる。有段向け。
★★☆☆☆
必至の入門書。必至(必死)ってなに?という方が王手をかけずに相手玉をしばって勝てるようになりますように。初心向け。
『所司和晴「次の一手」で覚える駒落ち定跡コレクション404』(マイナビ)
★★★★★
駒落ちに携わるすべての将棋人におすすめしたいが、定跡を覚えるなんてナウくないダサいメンドクサいと思ってる人にはおすすめできないかも。
佐藤友康『初心者が初段になるための将棋勉強法』(主婦の友社)
★★★☆☆
久しぶりに出た将棋勉強法の本。内容に目新しさはないが、ビジネスの世界に身を置く著者だからこその視点があり、そこは(記述法含め)勉強になった。
★★★★★
羽生先生の半生記。初タイトル獲得から七冠独占までのタイトル連戦の流れがよくわかってためになった。メインの脇役である島九段、村山聖九段がしっかり描写されていた。
★★★★★
研究会仲間の長岡先生が羽生先生のことを豊富なエピソードをまじえて紹介する読み物。一言で要約すると、尊い...。
加藤一二三『ひふみの言葉』(パルコ)
★測定不能
とにかく元気が出ます。時代は修造かひふみんかですね、ほんと。
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記載漏れがあったら言ってくださいね!
筋と形を囲碁から学ぶ
囲碁をやっていると、「こんな教材が将棋にもあるといいな」とか、「この人の棋風を将棋でも見てみたいな」とかいうインスピレーションを得ることがあります。
囲碁には「筋と形」というコロケーションがあって、経験則からこの形が9割方ただしく美しいよということを示しています。
筋と形に従って打つメリットは(1)きれいで再現可能な碁になること、(2)考える・読むエネルギーを省略できることがあるでしょう。
(反面、ゴリゴリの読みの碁には勝てなかったり、読まないといけない例外で失敗することはある)
ちなみに筋の反対は俗手(ぞくしゅ)。この辺の用語は将棋と同じですね。
今回はそんな教材を紹介してみます。
ちょっと数が多くなってしまったので内容の紹介は省きますが、どれも必読書でしょう。将棋に行き詰まりを感じた方は、読んでみてはいかが。
三村智保『筋がよくなる!勝てる!石の形集中講義』(マイナビ)
三村智保『初段突破 楽に勝てる石の形』(NHK出版)
『新ポケット定石100』(日本棋院)
↑これは★★★★★
『初段合格の定石150題』(日本棋院)
郭求真『筋が良くなる基礎詰碁200』(マイナビ)
月刊碁学編『ひと目でわかる「本筋・俗筋」対照表』(マイナビ)
前田陳爾『置碁辞典』誠文堂新光社
牛窪義高『碁の戦術』(マイナビ)
↑これは★★★★★
以上!これぜんぶの将棋バージョン書きたいな~
「ノーマル振り飛車の主役は角」 ~3つのエピソード~
まずは次の一手からスタート。答えは最後に。
今回は、ノーマル振り飛車戦法の要が実は飛車ではなく角なんだよという感覚を示す言説をご紹介します。もちろんそれが常に正しいというわけではないので、あくまで参考までにどうぞ。個人的には、ノーマル振り飛車における飛車は角にさばきを与えるための立役者であり、戦いが起きるまでは飛車は仮置き場に置いているにすぎないととらえたりしています。
(1)先崎学『駒落ちの話』(日本将棋連盟、p186、初出は将棋世界)
将棋指しは、駒落ちの上手に関して、おおまかにいえばふたつのタイプにわかれる。
飛車落ち派と角落ち派である。飛車落ちと角落ちというのは兄弟分であるが、似て非なるもので、上手として指しこなすコツもまるで違う。まあプロであるのだからどちらも指しこなせるのだが、やはり得手不得手、好き好きがわかれるのである。
飛車落ち派の代表は鈴木大介八段である。「角落ちよりも飛車落ちのほうが上手は勝ちやすい」などとよくいっている。どうも本気のようなので、飛車落ちの上手に相当の自信があるか、角落ちに自信がないかなのだろう。
藤井猛九段も飛車落ち派である。本人は公言していないが、あきらかにそうだ。またこれは一局も見たことがないのだが、久保利明八段も飛車落ち派であろう。想像で書くが、彼は角落ちの上手は苦手に違いない。なにしろあの捌きの将棋ですからね。
ベテランの棋士でいえば、鈴木君の師匠の大内延介九段なども飛車落ち派である。これも久保君と同じく豪快な捌きの棋風であるところからだろう。飛車を大きく捌くのが好きな棋士が、飛車のある角落ちよりも飛車のない飛車落ちのほうが得意というのは、将棋とは不思議なものである。
ここまで棋士の名前を見て、もうお分かりでしょう。そう、飛車落ち派は振り飛車党の棋士に多いのである。たしかに飛車落ちの上手の陣は振り飛車の陣形に似ていなくもない。
(前略、玉を囲うのが2八と8八どちらがよいかに触れて)そう、2八に行きたいでしょう。8八は、飛車と角の両方の利きに入って、盤上で最も危険な場所といえます。
振り飛車は玉を右に囲う戦法で、飛車と角の両方の利きから逃れています。つまり振り飛車の美濃囲いは非常に理にかなっています。ただし飛車が2八にいては玉を囲えないので、最初に飛車を動かすんです。振り飛車戦法は「美濃囲い戦法」と呼んでもいいくらいだと私は思っています。美濃囲いに囲うのが本当の目的なんですね。(太字著者)
勝又六段が中田功八段へインタビューした際の中田八段の発言。
「振り飛車の長所は?」と聞かれたら、私は真っ先に「角が敵陣をにらんでいることだ」と答えます。だからコーヤン流は角に頑張ってもらうための戦法なんです。ちょっと藤井システムに似ている?そうですね。穴熊を退治しようと思ったら飛車より角ですよ。角を切って飛車をさばくのではなく、飛車を切って角をさばくのではないと。だから私の飛車はタテよりもヨコに動くほうが多い。
ちなみに上図から、△2四飛!▲同歩△6五歩▲2三歩成△6四角と進展、結果はコーヤン勝ち。
最後に冒頭の次の一手の答え。
▲5五同飛が正解。以下△同角なら▲同角で飛香両取りがかかる(下図)。
問題図で、▲5五同角から行くと、△同角▲同飛に△4四角などのまぎれの可能性を与える。
A級ラス前解説会
いてはりました。
11時に仕事が終わって帰り道、気がつくと千駄ヶ谷だったので「A級ラス前は年に一度しかないし」と思って下車。
解説会に来るのは何年ぶりか思い出せないくらいですが、ともかく久しぶり。将棋会館には強くなる空気が漂ってると思います。あ、それは2階のトイレの芳香剤の匂いとは別です。たしかに匂い強いけど。
11時半をゆうにすぎてから入ったので、二列目の席が空いていました。女性客の多さに驚く。半分以上だったのではないか?時代は変わりましたねえ。
そして棋士に向かってパシャパシャカメラ。いつもツイッターで見る写真はこうやって生成されてるんだなあと、ありがたいやらちょっとうるさいやらでなんか不思議な感覚です。
ツイッターで見かける人もちらほら。
解説は名人と木村九段と佐々木勇気六段が入れ代わり立ち代わり。久保三浦戦の棋譜から伝わる三浦九段の執念というか諦めきれなさに切なくなりました。やっぱり最後に残るのは久保三浦戦なんだよね。
やはり(関西の対局もあるけれど)現場の空気はいいですね。将棋が強くなるといいますが、それは将棋へのモチベーションが上がるからだと思います。うまく言葉にはできないのですが、たとえば名人でさえちゃんと考えなければ詰みは読み切れないんだとか、棋士によっても形勢判断は微妙に違うんだとか、そういうささいな人間味を感じることで、強い人とはいえ神ではないのだなあと安心し、自分も努力しようと思う気になる。
明日からも将棋頑張ろっと☆
象のあし(荻窪)閉店の日に
友人からのメッセージで荻窪の「象のあし」という古本屋がまさに今日閉まることを知り、急きょ電車に乗る。
午後3時頃ついたが、店内はお客さんでいっぱい。なんやなんやとおもっているとそのお客さんの大半は、店主が一人でレジを打つのを待つ行列でした。
めぼしい将棋の本を手に、並ぶ。
https://twitter.com/zounoashiheiten/status/1086572592654213120?s=19
スタッフと思しき人が何人かいて、棚を直したりしてせわしなく動き回っている。行列に並ぶ間に知ったのだが、その人たちはボランティアの手伝い。店主の友人で、仲良くしているらしい。
決して広くない店内には、有名人からの閉店を惜しむ色紙・メッセージがところ狭しと飾られていて、こちらも店主の人望をもの語っていた。
30分ほど列を待つと、ようやくレジまであと一人。有志のなかの、とりわけ陽気なおじさん(見た目は菊地成孔でイメージすべし)と楽しく談笑。客が商品を買って店を出るとき、店主の方はひとりひとりをレジを出て店外まで見送り、深々と頭を下げていた。
逆説的にも、また行きたいな、と思った。
※閉店セールにつき8割引、1000円以下の本は100円扱いでした。
米長邦雄が聞き、語る人生論。
盤駒を作るプロの半生記。
サイン入り600円。
古書ながら美本で、丁寧に扱われているのがわかる。
600円ならお買い得。大山棋譜集はいろいろと出ていますね。
こちらも3巻で600円ならと、すでに持っているが購入。教室においておこう。
南Q太先生の過去作は、レジを待っている間に気づいたらカゴに。100円だからいいんだもん。
将棋世界の付録(30円)は、セール価格だと10円になりますと丁寧に店主。たぶん割引率のことを気にしてるのかもしれないけど、そんくらい構わん。
帰りに、荻窪の古本屋のこり3軒と、中野の古本屋に立ち寄った。
こちらは有名なささま書店で。
昔読んで手放した初心本を取り戻す時期にいる…
以下は中野の古本案内処
など。他に数冊。
私は読んだ棋書を通読したことはほぼない。数少ない例外は森内『矢倉の基本』くらい。
そのへんの話はまた改めてすることにします。
【棋書】最近読んでる本
最近は読んでいる本を紹介していきましょう。日ごろそれほどまとまった時間が取れないので、目的をもちながら細切れ時間を生かす読書が中心になっています。(私はウォーズや24はほぼやりません)
なかでも詰将棋と棋譜並べが中心。実際に将棋盤を使わなくても勉強できるのがいいですね。
【詰将棋】
伊藤果『果し状』
伊藤果八段が詰将棋創作50周年、八段昇段を機に出版された記念作品集。
10手から20手台の骨のある作品が多いですが、駒数が少ないので頭の中で考える訓練に最適です。サイン本ながら、解けた作品にチェックをつけています(罰当たり笑)。出版から約3年、全200題のうちようやくだいたい半分解けたところです。
仏文学者の佐々木明氏は巨椋鴻之介(おぐらこうのすけ)の名で詰将棋作家としても活躍しました。彼の集大成の作品集。約10年前に出版されたのち、現在では絶版となっています。
皆さまが日頃よりみずたまに付き合ってくださるおかげで、欲しかった詰将棋作品集『禁じられた遊び』を購入できました!いつもありがとうございます。
— みずたま (@go_tom_89) January 13, 2019
本書は第1部「原点と習作」と第2部「禁じられた遊び」に分かれています。後者は盤面全体を使った図式がメインなので、目下のところ第1部を慈しむように楽しんでいます。文学界の人なだけあって文体が格調高く、また作品の合間に語られる昭和の様子にえも言われぬ滋味があります。
【棋譜集】
先日竜王を獲得した棋士による実戦集。以前メイン戦法として指していた四間飛車穴熊の勝局を50局紹介しています。相穴熊と、四間飛車穴熊vs居飛車銀冠の戦いが中心的です。とりわけ相穴熊の戦いは仕掛けの数手が繊細ですが、そのあたりの考え方がよく解説されていて非常に勉強になります。ノーマルな対抗形にも応用できそうです。
本書が刊行された当時は広瀬先生の王位獲得がメイントピックでしたが、竜王を獲得した今、『広瀬流角換わり腰掛け銀勝局集』の出版が待たれますね。
12月の新刊紹介でも触れましたが、王道中の王道を往く康光将棋(当時)の堂々たる指し回しを学ぶために鑑賞しています。21世紀の『中原誠実戦集』といっても過言ではないか・・・?
『藤井聡太全局集』
出版から半年が経ちましたが、最近自分自身が将棋を指す中で、ようやく「29連勝目」の藤井ー増田戦をうまく理解できるようになりました笑
平成31年度版の出版までに全部消化できるだろうか...
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みなさんも将棋の勉強楽しみましょうね!
ではまた。
あきこと学ぶオポジション
どうぶつしょうぎを教えていて気づいたこと。
将棋の導入のために開発されたどうぶつしょうぎですが、小さな子、未就学児にとってはまだ難しいゲームです。
いくら駒が少ないとはいえ、駒を進めるという基本的動作だけでなく、駒を取る、打つというイレギュラー的動作が必ず起きるのが大変なようです。
今こうしてさりげなく言った「駒」「打つ」のような一見簡単な言葉も、子どもにとっては「大人の専門用語」なわけです。
てなわけで、最初の最初は、「ライオンを取る」という最後の動作から教えます。
そのためにやるのが「ライオン一騎打ち」。
双方のきりん、ぞう、ひよこを取り除いてどちらかがライオンを取るまでやります。
もちろん大人の常識から見たら引き分けが結論なのですが、やってみると結構楽しそうにきゃっきゃと盛り上がってくれます。(もちろんオトナはわざとライオンを差し出すことも必要)
最初はトライルールはなしでやりますが、慣れてきたらトライルールを導入。トライとは、ライオンが相手陣4段目に安全に侵入できたら勝ちというもの。(安全にというのは、侵入した直後の手で取られたら負けということ)
どうぶつしょうぎは手頃な盤面編集アプリがないので、今回は偉大なるローソン様のからあげクンしょうぎに協力を仰ぎます。みんなやってね!
さて、このライオン一騎打ち(相手のライオンをとったら勝ち。トライルールあり。)は、先手が必勝になります。
初手は前か横か斜めの3通り。
①斜め
斜めに出ると、相手は横に出てきます(図)。
そこから横に移動すると、相手も一歩横へ追随してきます(図)。
ここからいろいろな手がありますが、これは引き分けになりそうです。この局面、手番が相手ならこちらの勝ちというのがヒント。
②横
初手に横に移動すると、相手は斜めに向かって動いてきます(図)。
この一間(いっけん)を開けて向かい合う形がこのゲームの急所で、この後は互いにミスが出ない限りはこれで先手負け。引き分けと負けの判断は難しいですが、先手で勝てないのは等しく失敗と見てもらってかまいません。
③前
初手前進は、好手で、これで先手勝ち。
言われてみれば簡単ですが、この局面、相手はどちらかの横に動いて先手に道を譲るしかありません。
あとは譲られた道を進めばトライorキャッチ確定。
よく見ればさきほどのこの形、
先程出てきた急所の一間トビの形ですね。
「一間トビで相手が手番ならば自分は道を譲ってもらえる(イコール勝ち)」がこのゲームの基本図式です。
楽しいのでみなさんもぜひやってみてください(Lineでローソンと友達になるだけ!駒の使用制限は設定画面から。)
なお、この一間トビで手番を渡すのはチェスのオポジションという概念と何ら変わりません。興味がある方は調べてみてくださいね
チェスに関するおすすめ書籍は渡辺暁『渡辺暁のチェス講義』です。