みずたま将棋ブログ

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「ノーマル振り飛車の主役は角」 ~3つのエピソード~

まずは次の一手からスタート。答えは最後に。

 

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今回は、ノーマル振り飛車戦法の要が実は飛車ではなく角なんだよという感覚を示す言説をご紹介します。もちろんそれが常に正しいというわけではないので、あくまで参考までにどうぞ。個人的には、ノーマル振り飛車における飛車は角にさばきを与えるための立役者であり、戦いが起きるまでは飛車は仮置き場に置いているにすぎないととらえたりしています。

 

(1)先崎学駒落ちの話』(日本将棋連盟、p186、初出は将棋世界

 

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角落ちと飛車落ち。どちらが好み?

将棋指しは、駒落ちの上手に関して、おおまかにいえばふたつのタイプにわかれる。

飛車落ち派と角落ち派である。飛車落ちと角落ちというのは兄弟分であるが、似て非なるもので、上手として指しこなすコツもまるで違う。まあプロであるのだからどちらも指しこなせるのだが、やはり得手不得手、好き好きがわかれるのである。

飛車落ち派の代表は鈴木大介八段である。「角落ちよりも飛車落ちのほうが上手は勝ちやすい」などとよくいっている。どうも本気のようなので、飛車落ちの上手に相当の自信があるか、角落ちに自信がないかなのだろう。

藤井猛九段も飛車落ち派である。本人は公言していないが、あきらかにそうだ。またこれは一局も見たことがないのだが、久保利明八段も飛車落ち派であろう。想像で書くが、彼は角落ちの上手は苦手に違いない。なにしろあの捌きの将棋ですからね。

ベテランの棋士でいえば、鈴木君の師匠の大内延介九段なども飛車落ち派である。これも久保君と同じく豪快な捌きの棋風であるところからだろう。飛車を大きく捌くのが好きな棋士が、飛車のある角落ちよりも飛車のない飛車落ちのほうが得意というのは、将棋とは不思議なものである。

ここまで棋士の名前を見て、もうお分かりでしょう。そう、飛車落ち派は振り飛車党の棋士に多いのである。たしかに飛車落ちの上手の陣は振り飛車の陣形に似ていなくもない。

 

 

(2)藤井猛四間飛車上達法』(浅川書房、p8)

 

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仮想図。右と左のどちらに玉を囲うか。

(前略、玉を囲うのが2八と8八どちらがよいかに触れて)そう、2八に行きたいでしょう。8八は、飛車と角の両方の利きに入って、盤上で最も危険な場所といえます。

振り飛車は玉を右に囲う戦法で、飛車と角の両方の利きから逃れています。つまり振り飛車の美濃囲いは非常に理にかなっています。ただし飛車が2八にいては玉を囲えないので、最初に飛車を動かすんです。振り飛車戦法は「美濃囲い戦法」と呼んでもいいくらいだと私は思っています。美濃囲いに囲うのが本当の目的なんですね。(太字著者)

 

 (3)勝又清和『最新戦法の話』(浅川書房、p244)

 

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高野-中田戦(2004年)は有名局。

勝又六段が中田功八段へインタビューした際の中田八段の発言。

振り飛車の長所は?」と聞かれたら、私は真っ先に「角が敵陣をにらんでいることだ」と答えます。だからコーヤン流は角に頑張ってもらうための戦法なんです。ちょっと藤井システムに似ている?そうですね。穴熊を退治しようと思ったら飛車より角ですよ。角を切って飛車をさばくのではなく、飛車を切って角をさばくのではないと。だから私の飛車はタテよりもヨコに動くほうが多い。

 

ちなみに上図から、△2四飛!▲同歩△6五歩▲2三歩成△6四角と進展、結果はコーヤン勝ち。

 

最後に冒頭の次の一手の答え。

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飛車は角をさばくための立役者。

▲5五同飛が正解。以下△同角なら▲同角で飛香両取りがかかる(下図)。

 

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両取りで成功。

 

問題図で、▲5五同角から行くと、△同角▲同飛に△4四角などのまぎれの可能性を与える。