みずたま将棋ブログ

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子どもに人気の詰将棋10選

こどもの教室や大会に参加して時間があまると、詰将棋を教えて時間をつぶすことがあります。その時どきて詰パラのヨチヨチルーム~小学校くらいの手数ならいい感じで楽しんでもらえるようです。

 

大道詰将棋ではないですが、解けた解けないと言いながらわいわい盤を突っついていると良いコミュニケーションになるんです。いつもうるさいワンパクボーズたちも、このときだけは答える順番を守りながら真剣に盤面を見つめてくれる...

 

定期的に生徒と顔を合わせる教室だと、将棋大好きな子が「詰将棋つくったよー」なんて来てくれて、それをちょっと手直しするのもおもしろいです。

 

今日はそんなスキマ時間に便利な基本詰将棋を10題紹介。

 

【1】1手詰

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将棋の歴史とおなじだけの歳月を経てきた詰将棋

これが解っても、歩が銀になった途端にわからなくなる子もいますから、辛抱強く教えましょう。

 

 

【2】3手詰

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頭金の次に教えてあげたい基本の手筋。

自力で解けた時のエウレカ感は一種の快感です。

これも初見ではまず自力では解けないでしょう。

 

 

【3】5手詰

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渡瀬荘次郎『街宵』8番。

作品と言えるかは微妙ですが、子どもがはじめて挑戦する5手詰として最適と思います。これも自力で解けるか解けないかという子がたくさんいて出しがいがあります。

 

【4】3手詰

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古来から伝わる作者不詳の超有名作。

なるべくこの問題を知らない子に解かせてあげましょう。

おもしろいくらいに解けないです笑

 

 

【5】5手詰

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(久留島喜内『将棋妙案』6番)

これも覚えていて損のない名作。

中村王座が報道番組のゲストで呼ばれたときにその場で解かされていましたね。

 

【6】7手詰

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作者不詳の作品。

このくらいの問題を大盤に再現して置いておくだけで、かなりの時間こどもを煙に巻くことができますよ笑

真面目な話、詰将棋において攻方と玉方の双方が最善手順を選ぶということを説明するのに使います。

 

【7】11手詰

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出ました定番。見栄えがよく、持ち駒も綺麗なのに同時に詰み手順も美しく、解ってしまえば簡単という解後感を備えた作品。

ヒントを出しながら解いてみましょう。今日こどもに出したら20分はつついてましたね笑

 

【8】15手詰

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これを出題するときは、「香車とほかに歩が何枚あったら詰むかなあ」ととぼけながら図を作ります。あるていど将棋が解っている子(10級くらい)だと、「歩なんかいらないよ」と言ってくるので「本当?」なんていいながらこどもを焚きつけてやる気にさせるのはあなたの腕次第。まあ私がこどものとき勝又先生にやってもらった教え方なんですがね笑

 

有名な大道詰将棋の香歩問題の基本ですが、初めてみたときの感動はいつまでも色あせません。

 

【9】13手詰

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きれいで詰み筋もいい古作ですね。初段を目指す子なんかにはさっと解いてほしいですね。あまりこれを出題する機会はないのですが。

 

【10】17手詰

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堀半七の名で知られるこの作品ですが、その発表に先立つ『小林棋好手記詰物』(小林棋好)にも掲載されているようです。

いずれにしても、エレベーターのような楽しい作品。解けないとストレスが貯まりますので、ほどほどに笑

 

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参考文献

二上達也・福田稔『名作詰将棋』有紀書房、1986年

青野照市『古典詰将棋』光文社文庫、1993年

【レビュー】カクナリ!を読みました

いまさらながら、「将棋同人誌KAKUNARI!」をイッキ読みしました。

 

Twitterを中心に交流されている観る将・指す将・撮る将・書く将・描く将などをされている方々が日々のそれぞれの○○将活動を短い漫画や記事で紹介する同人誌です。

 

かるこえさんという方が中心になって2017年に創刊号が出、先日3巻目が出たとのこと。興味のある方はカクナリ!で検索してみてください。

 

どれも面白く一気に読み倒してしまったのですが、今回は私が読んだ中で印象に残ったものをぼんやりとご紹介。

 

創刊号

ゆーてんさんの「初心」は、ある棋士を応援することになった経緯を紹介するエッセイ。棋士に対する愛のある文章は、その棋士をより深く理解できるようなエピソードもあって読んでいて清々しい気持ちになります。

「プロ棋士似顔絵講座」を書かれたさんぺいさんはプロのイラストレーターの方ですが、A4・1ページで描写のコツを簡潔にまとめられていて勉強になりました。

 

第2号

プロ棋士大平武洋先生が寄稿されたのには驚きました。内容も名棋士との知られざるエピソードで、心が温まりました。ゆーすさんの「イカした仲間を紹介するゼ」は破壊力抜群のマンガ。私、ういう単純なの(失礼)に弱いのでとても楽しく読ませていただきました。Ryohei Noguchiさんの「ビストロ銀冠 ~美味しい食材(きふ)揃ってます~」は自身のお気に入りのプロの対局をメニュー風に紹介。棋譜×棋士というのは楽しめる読者層の多い題材ですね。ぬ子さんの「いろんな羽生さん」はタイトルがすべてを物語る絵でした。愛が溢れている...マンガではかねこさんの「Wand」が素朴な表現で好きです。

 

第3号

沙耶さんの「将棋イベントのススメ」は文字情報だけなのですが将棋イベントの魅力を簡潔にまとめた好作。誰かが楽しんでいるのを見ている・読んでいるとこっちまで楽しくなってきますよね。kazさんの「俺の藤森先生」(p60)はとても力強い筆致で息を呑みました。もちぐまさんの「脇息になりたい。」もタイトルが出落ちかんがあるのですが笑、それだけではなくてリアルな将棋会館の和室描写という意味でも価値があると思いました。

 

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第4号が出るのかはまだわかりませんが、私も機会があればこんな素敵な同人誌になにか書いてみたいなと思いました。

【棋書】居飛車本格派になる10冊(定跡編)

初段を目指す級位者向けに、居飛車を指す上で知っておきたい定跡を掲載した棋書をご紹介しましょう。今回は定跡編で、次回は棋譜並べ編の予定です。

 

10冊すべてを読む必要はないかもしれませんが、興味を持った1冊を繰り返し読んでマスターするのがいいでしょう。

 

【総論】

定跡の仕組みを広く浅く概観する総合定跡書たち

 

(1)羽生善治羽生善治の定跡の教科書』河出書房新社

※初心向け

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羽生先生が監修する定跡入門書。将棋にはどんな戦型があるのかを知るために最適なカタログ的な一冊。相居飛車から相振り飛車まで、各定跡の有名な変化を考え方とともに紹介しています。類書に「羽生の法則3」(文庫版)があり、これは玉の囲いと仕掛けについてプロの実戦例とともに解説しています。

 

(2)上野裕和『【増補改訂版】将棋・序盤完全ガイド 相居飛車編』マイナビ

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プロの将棋における序盤の流行の変遷を級位者に分かりやすく解説。解説盤面に矢印や色分けを多用して書籍になじみにない方でも安心して読めると思います。将棋が一つのストーリーとして見えてくるのが興味深いです。同著者による『【増補改訂版】将棋・序盤完全ガイド 振り飛車編』も必見です。

 

(3)佐藤慎一『将棋・基本戦法まるわかり事典』マイナビ

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居飛車の基本である矢倉・相掛かり・横歩取り・角換わりを指すにあたって、必ず押さえておきたい基本変化を紹介した一冊。全ての変化を覚えるのは有段になってからで十分ですが、なぜこの局面でこう指すのかという、棋理の一端が垣間見えることでしょう。

 

【各論・相居飛車

 

(4)井上慶太居飛車棒銀で戦え』NHK出版)

※初心向け

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居飛車は自ら作戦の主導権を握りに行く構えですが、相手の作戦に応じた柔軟な対策が必要になります。その点で棒銀はいつでも使えておすすめ。本書は初心者から初段まで幅広くおすすめできる好著で、相掛かり・矢倉・角換わり・対四間飛車を網羅しています。

 

(5)塚田泰明『角換わり 初段の常識』マイナビ

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ここ数年で数段階ブラッシュアップされた角換わりを大まかに解説。なぜかつての先後同型や単純な棒銀は流行っていないのか、相腰掛銀の最先端はなどなど、仕掛けにまつわる新しい常識を授けてくれる必読書です。私自身、発売日に購入して、興味深く1時間で読み通してしまいました。

 

(6)西尾明『よくわかる角換わり』マイナビ

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(5)の塚田先生の本が現代の常識とすれば、この西尾先生の本は昭和から平成、すなわち近代の角換わりの常識を網羅した名著です。当時はやっていた一手損角換わりに関する章があったりとやや時代を感じさせますが、棒銀や早繰り銀の受け方など、いつまでも色あせない常識が得られるでしょう。なお、この「よくわかる」シリーズは他に相掛かり(中座)、横歩取り(野月)など名著揃いです。

 

(7)野月浩貴『最新の相掛かり戦法』日本将棋連盟

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相掛かり定跡に関する本は決して多くはないですが、直前に紹介した『よくわかる相掛かり』(中座真)とともに、本書は双璧です。出版は2010年と古いのですが、昭和の時代から定跡化されてきた相掛かり戦法の▲26飛型と▲28飛型を必要十分な量だけ収録した名著と思います。なお、この「最新」シリーズはほかに△8五飛戦法(高橋)などがあり、これも名シリーズです。

 

(8)飯島栄治『横歩取り超急戦のすべて』日本将棋連盟

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居飛車の苦手意識を払拭するには、まず得意戦法を持ってライバルを倒す経験が重要かもしれません。その意味で横歩取りの(急戦)△3三角戦法、△4四角戦法、△4五角戦法は初段レベルでの必勝戦法になるポテンシャルがあります。将棋世界誌に連載されていた安心のクオリティをお楽しみください。飯島先生には他に相横歩取り横歩取り△2四飛ぶつけの著書もあります(日本将棋連盟刊)。

 

【各論・対振り飛車 

 

(9)渡辺明渡辺明居飛車振り飛車Ⅰ・Ⅱ』NHK出版)

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対抗型の序盤を解説した級位者向けの概説書。1巻では四間飛車以外の振り飛車を紹介しています。なぜ現在ノーマル中飛車三間飛車には穴熊が主流なのかを、具体的な手順とともに理解できるでしょう。2巻は藤井システム前後の歴史と対策を広く網羅しています。序盤研究の第一歩としておすすめ。

 

(10)渡辺明四間飛車破り』(急戦編・居飛車穴熊編)浅川書房

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「将棋に勝つには得意戦法を持つのが手っ取り早いです。アマの将棋で時代を問わず根強い人気を誇るのが四間飛車であることを考えれば、急戦を用意しておくのが一番簡単だ。ましてや居飛車穴熊の時代とあっては、四間飛車側が正確に対応しきるのは難しい。」(#今日の棋書 ツイートより)

 

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我流の将棋ではいつか限界が来ます。

怖いのは、将棋とはそのていどのゲームだと誤解されてしまうことです。

 

理論の勉強と実戦対局をバランスよくこなして快適な将棋ライフを過ごしてくださいね。

 

 

【定跡】角換わりでじゃんけんする(1)

角換わりじゃんけんの法則のはなしをごく簡潔に説明します。

後手番が一手損をしない、いわゆる正調の角換わりのおはなしです。

 

角換わりにはおおきく、腰掛け銀棒銀早繰り銀の3つの戦法がありますね(これを知らない場合は観る将のお母さんに聞いてみよう)。ちなみに右玉は万能選手なので今回は登場しません(知りたい場合は身の回りの青嶋先生にきいてみよう)。

 

これら3つの戦法には相性があります。すなわち、「(1)棒銀には早繰り銀、(2)早繰り銀には腰掛け銀、(3)腰掛け銀には棒銀という対抗策が有力とされています。

 

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【基本図】

 

(1)棒銀には早繰り銀

基本図から、▲25歩△33銀▲27銀棒銀を目指してみます(太字は本手順)。

 

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これには△74歩△73銀と早繰り銀に組むのが好形。

 

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さらに▲15銀と進出されて後手困ったようですが...

 

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ここで△54角が名手。

 

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さらに▲24歩だと△同歩▲同銀に△27歩で試合終了です。

 

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以下▲33銀成△28歩成▲32成銀△同飛で後手が大きな駒得です。

 

ですので戻って、△54角には▲38角として△27歩に備えます。

 

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ここで△44歩が間に合うのが定跡の仕組み。どういう意味かというと...

 

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図以下、▲24歩△同歩▲同銀△同銀▲同飛に、△33金が成立。

 

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先手の飛車は成れません。これにより2筋方面は互角の取引で収まります。

このとき、左辺に注目しましょう。▲25飛△24歩▲28飛などとおさまったとき、△64銀と△54角(八方角)の相性が抜群です。これはすべての駒が抜群に働いて、難しいながら後手不満ありません。

 

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(2)早繰り銀には腰掛け銀

 

基本図に戻って、▲36歩と早繰り銀を見せれば後手は△64歩△63銀からの腰掛け銀で対抗。

 

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以下一直線に先手が攻めようとすると...

 

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だいたいこうなります。▲46銀に代えて▲26銀だと棒銀に戻りますね。

 

ここから気になるのは▲35歩の仕掛けですが...

 

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△35同歩▲同銀△34歩とあっさり対応してしまって...

 

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なおも▲24歩から攻めてくれば、次図。

 

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王手飛車がありますね。

 

ということで戻って、いきなり▲35歩はやりすぎになります。

代えて▲68玉や▲16歩と手を入れれば、△44歩が間に合う仕組みになっています。

 

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なにを言っているかというと...

 

図以下▲35歩がいちおう防げているのです。以下△45歩として(△35同歩▲同銀△86歩からの継ぎ歩はぬるい)

 

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▲34歩△46歩...a▲33歩成△47歩成▲32と の攻め合いは後手金損となり、一見まずそうですが…

 

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ここで△46角とど急所に角が打てるので、一局ながら後手持ち。

 

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※ソフトの評価はほぼ互角でした。ただ、a△46歩の攻め合いでは△34同銀と穏やかに指す手もあるでしょう。

 

(3)腰掛け銀には棒銀

これはいままでのことから自明ですね。棒銀には早繰り銀、早繰り銀には腰掛け銀なのですから、自分を有利にするには棒銀にするのが一理ある選択。この変化は有名なので割愛します。

 

ただし、先手腰掛け銀に対する後手棒銀も決して有利になるというわけではなく、むしろ腰掛け側がやや作戦の含みが多く(右玉など)、より好まれるようです。このへんは語りだすと長くなるのでまた別の機会に回しましょう。

 

(注意点)以上の変化は、それぞれの作戦に対抗しやすい形というだけであって、実際にやってみれば局面自体は非常に難解です。興味を持った形を研究してみてくださいね。

 

角換わりじゃんけん(2)では相早繰り銀も扱う予定です。

6月の新刊紹介

梅雨ですけど、はりきっていきまっしょい。

6月上旬の棋書紹介。主要4冊をチェックしました。

 

1. 『羽生善治永世七冠 必勝の一手』森けい二(日本文芸社

 
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羽生二冠が永世竜王を獲得したあとに森先生みずから羽生先生に諒解を得て編集された、実戦次の一手集。森先生による羽生本はもはやおなじみですね。

 

羽生先生の最近の実戦を以下の10章に分類。「横歩取り(先手・後手)」、「角換わり腰掛銀(先手・後手)」、「矢倉(先手・後手)」「対振り飛車」、「振飛車」、「角換わり棒銀」、「雁木その他」。各章およそ10問で、合計100問。

 

中盤から終盤の入り口の問題がメイン。素直な手が正解な場合が多く、級位者にもおすすめできます。

 

これを繰り返せば実力の向上はもちろんのこと、羽生マニアへの道も歩むことができるでしょう。

 

2. 『【増補改訂版】将棋・序盤完全ガイド 相居飛車編』上野裕和マイナビ


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5年前に出版された同タイトルの書籍を大幅に加筆した、序盤理解のためのガイドブック。

 

将棋の序盤をひとつのストーリーとして捉え、ほんのわずかな優位を掴むために繰り広げられる先手と後手のしのぎの削り合いを描きます。

具体的な手順は極力ひかえられ、また図面には矢印などが多用されているのが好印象です。

 

矢倉が(一時的に)衰退し、その代わりに雁木が台頭してきた現代将棋の模様を新章によって反映しています。

 

指す将必読、観る将must読の一冊。

 

3. 『コンピューター発!現代将棋新定跡』suimon(マイナビ


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コンピューター将棋、あるいは将棋ブログ界で多大な貢献をされているsuimonさんによる相居飛車の最新研究書。250ページちかい大著ながらお値段据え置きの新設設計。

 

 「角換わり▲4五桂」、「角換わり▲4八金」、「雁木」、「相掛かり△7四歩取らせ」という4章構成です。 それぞれの節の結果図に、コンピューターソフトによる評価値を載せているのも画期的でしょう。

 

ソフトの評価値は、その後も正確に指し継げてはじめて使いこなせるという難物ながら、本書でそれぞれの手順の意味を知ることで、指し方に幅をもたせることが可能でしょう。

 

高段者向け。

 

4. 『心震わす将棋の名対局』後藤元気(大和書房)


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観戦記者の後藤氏の作品を集めた選集。様々なエピソードとともに棋譜を鑑賞することにより、単なる符号の羅列としての棋譜とは異なり、より深い次元で対局を味わうことができます。

 

羽生二冠や佐藤康九段らトップ棋士はもちろんのこと、神谷八段や畠山成八段など、普段あまり棋譜が出てこないベテラン棋士の闘いと人間味あふれるエピソードも面白いです。

 

中盤の大事な局面で手の解説がなかったりするのは良し悪しですが、総じてお買い得な一冊と思います。

 

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6月後半は藤井聡太全局集や各種読み物が出る予定ですので、スムースに読みたい棋書を読み進めていきましょう〜

【四間飛車基礎】将棋ルームより

 

今日の将棋ルームの参加者の方と指した将棋から。

参加された皆さまお疲れ様でした。 

 

参加者の方が先手で、四間飛車を得意戦法にしたいというケースです。

 

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今回は右銀急戦を採用してみました。

限られた対局時間の中で再現率の高い局面をお伝えできればと考えながらいくつか指導プランを用意しています。

 

ここから▲56銀とすると、以下△75歩▲65歩のときに、△77角成▲同桂△53銀が好手。

 

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この瞬間、次の△76歩の取り込みと△86歩の飛車先突破が同時には受けづらいです。

 

最初の△64銀には「戦いの起こる筋に飛車を振れ」の格言通り▲78飛が常套手段です。また、この手では▲56歩として、△75歩の瞬間に▲78飛でも良いでしょう。

 

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四間飛車においては、居飛車からの仕掛け△75歩を▲同歩と取るのは非常に限られた場合しか成立しません。つまり、△75同銀として居飛車の銀が5段目に来るのが非常に好形なのです。

 

さて、本手順に戻って次の難関は△76歩▲同銀△72飛の局面。

 

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ここでは銀取りを受ける必要がありますね。

 

今回の場合は▲88角という手をご存知だったのでこの手順を進めていきます。

なお、代えて▲65歩や▲67金も有力です。前者は『四間飛車を指しこなす本1』(藤井)、後者は『四間飛車破り』(渡辺、なお左銀急戦だが)に詳しいです。

 

▲88角には△65銀という派手な手もありますが、今回は△77歩という軽妙手を放って応手を問いました。

 

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初見だと少し焦りますが冷静に見ればここは▲77同飛の一手ですね。

以下△66角のときに...

 

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▲67銀が定跡の教える好手。この手を知れば△66角は怖くありません。

 

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ここから△77角成▲同角△22銀となった局面は...

 

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1.手番 振り飛車

2.玉の堅さ 振り飛車

3.駒の効率 互角(盤面左にあるお互いの銀・桂を見比べる)

4.駒の損得 飛車 vs 角(互角 or やや飛車が得)

 

ただし、この局面では斜めのラインのスキが居飛車陣に多いので個人的には振り飛車を持ちたいです(具体的には▲83角)。対して美濃囲いのほうに意外と飛車打ちのスキがないのです。

 

以上の変化は数多くの定跡本で紹介されている、ある種の常識とも言えるので、四間飛車党の方は記憶しておくと良いでしょう。

 

最近の本だと藤井九段の四間飛車上達法』に載っているという情報がありました。難しい本ですがこちらもぜひ。

 

最後に、四間飛車とは関係ないのですが、上達の壁にぶち当たっている方とお話をする中で思い出した私の好きなブログ記事を紹介しておきます。以前にツイートでもご紹介しましたが。

 

読みの技法 番外編 県代表クラスになる為のある一線 | 将棋・序盤のStrategy ~ 矢倉 角換わり 横歩取り 相掛かり 中飛車 四間飛車 三間飛車 向かい飛車 相振り飛車 ~

今日指した将棋から

ひさびさに参加した研究会の将棋より。 

 

強い人と、すごく強い人がいっぱいいました(小学生並みの感想)。

 

1局目は私の後手でした。相手は強いお兄さん(ハタチらしい)。

 

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前の対局では一間飛車をやられていたので警戒していたのですが、相手がそれ以上に私のクルクル角を警戒した序盤戦で、結局はよくある形に。

 

上図から、△64歩▲46歩65歩に▲55歩が深遠な一手。

 

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ただですが、△55同歩には▲65歩、△同角には▲56銀を用意しています。▲56銀には△66角とした局面がまた難しい...

 

コンピューターに聞けば簡単なのでしょうが、我々レベルでは簡単に結論が出せませんでした。そういえば私のShogi GUIからは空き容量の関係でソフトを抜いてしまったのでいまは評価値が出せないです笑

 

実戦は▲55歩に△同歩とし、先手も▲65歩と取り返して穏やかな展開に。

同角の変化は3年ほど前に社団戦で指してうまく行かなかった感触があったので回避しました。

 

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ここで、安易な気持ちで△86歩と突き捨てたのですが、悪手でした。

以下▲86同歩△54銀▲66銀△53銀右のときに...

 

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一歩余計に渡したので▲56歩△同歩▲55歩と位を取り返されたらなかなかにだめでした。

 

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歩の突き捨てに厳しいのは相居飛車という先入観がありました。これからは気をつけます。

 

 

実戦は▲47金と穏やかな順。とはいえゆっくりしていると今度こそ55の位を奪回されるので△85歩▲同歩△73桂と動いていきました。

 

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ここは先手も手が広いところで、力が試されます。

実戦の▲58飛以外にも、▲56歩や▲88飛も検討したいところ。持ち時間20分の将棋だったので先手も決断よく来ました。以下△65桂▲同銀△同銀▲55飛と進展。

 

 

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気持ちよく飛車をサバかれました。これを△55同角と取ると▲同角で本格的に収集がつかなくなります。ここは△54銀引で我慢しました。ここで形勢判断をすると、居飛車の右桂が銀になって駒台にいる計算なので、ゆっくりした展開になれば良くなるかな、と思いました。

 

実戦は▲54同飛から攻めかかってきましたが、やや乱暴でなんとか受けきることができました。仕掛け周辺は研究のしがいがありそうです。

 

負けた将棋もご紹介。相手は同い年の強いお兄さん。

私が先手でした。

 

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序盤の駆け引きの中で先手玉が6八にいたのが気に食わず▲79玉と移動したのですが、この瞬間△65歩と突かれて▲49飛と▲79玉の相性の悪さを突かれました。

 

ここは▲46銀と▲45歩で迷いましたが前者はタイミングを見て△45歩を食らう未来が見えてさすがに断念。

 

▲45歩△同歩▲65歩△同桂▲33角成△同桂と進展。

 

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読み筋通りとはいえ、ここで▲68銀に△66歩が利くのがシンプルな誤算。

以下▲同銀△38角▲48飛△56角成▲67銀に△46馬の王手桂取りがあります。

 

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と書こうと思っていたら最後の▲67銀に代えて▲67金右で耐えそうですか。

 

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しかし最初の△66歩で単に△38角から△27角成ぐらいで悪いでしょう。

とはいえ本譜の単に▲66銀右に比べればだいぶましでした。▲44歩△同銀▲71角の楽しみもありますし。

 

以下は着実に負かされました。

 

負けたとはいえ、相居飛車の仕掛けは盤面全体を考慮に入れる必要があるのが難しいですね。同時にその難しさが楽しみでもあるので、今後も研究していきたいと思いました。