象のあし(荻窪)閉店の日に
友人からのメッセージで荻窪の「象のあし」という古本屋がまさに今日閉まることを知り、急きょ電車に乗る。
午後3時頃ついたが、店内はお客さんでいっぱい。なんやなんやとおもっているとそのお客さんの大半は、店主が一人でレジを打つのを待つ行列でした。
めぼしい将棋の本を手に、並ぶ。
https://twitter.com/zounoashiheiten/status/1086572592654213120?s=19
スタッフと思しき人が何人かいて、棚を直したりしてせわしなく動き回っている。行列に並ぶ間に知ったのだが、その人たちはボランティアの手伝い。店主の友人で、仲良くしているらしい。
決して広くない店内には、有名人からの閉店を惜しむ色紙・メッセージがところ狭しと飾られていて、こちらも店主の人望をもの語っていた。
30分ほど列を待つと、ようやくレジまであと一人。有志のなかの、とりわけ陽気なおじさん(見た目は菊地成孔でイメージすべし)と楽しく談笑。客が商品を買って店を出るとき、店主の方はひとりひとりをレジを出て店外まで見送り、深々と頭を下げていた。
逆説的にも、また行きたいな、と思った。
※閉店セールにつき8割引、1000円以下の本は100円扱いでした。
米長邦雄が聞き、語る人生論。
盤駒を作るプロの半生記。
サイン入り600円。
古書ながら美本で、丁寧に扱われているのがわかる。
600円ならお買い得。大山棋譜集はいろいろと出ていますね。
こちらも3巻で600円ならと、すでに持っているが購入。教室においておこう。
南Q太先生の過去作は、レジを待っている間に気づいたらカゴに。100円だからいいんだもん。
将棋世界の付録(30円)は、セール価格だと10円になりますと丁寧に店主。たぶん割引率のことを気にしてるのかもしれないけど、そんくらい構わん。
帰りに、荻窪の古本屋のこり3軒と、中野の古本屋に立ち寄った。
こちらは有名なささま書店で。
昔読んで手放した初心本を取り戻す時期にいる…
以下は中野の古本案内処
など。他に数冊。
私は読んだ棋書を通読したことはほぼない。数少ない例外は森内『矢倉の基本』くらい。
そのへんの話はまた改めてすることにします。
【棋書】最近読んでる本
最近は読んでいる本を紹介していきましょう。日ごろそれほどまとまった時間が取れないので、目的をもちながら細切れ時間を生かす読書が中心になっています。(私はウォーズや24はほぼやりません)
なかでも詰将棋と棋譜並べが中心。実際に将棋盤を使わなくても勉強できるのがいいですね。
【詰将棋】
伊藤果『果し状』
伊藤果八段が詰将棋創作50周年、八段昇段を機に出版された記念作品集。
10手から20手台の骨のある作品が多いですが、駒数が少ないので頭の中で考える訓練に最適です。サイン本ながら、解けた作品にチェックをつけています(罰当たり笑)。出版から約3年、全200題のうちようやくだいたい半分解けたところです。
仏文学者の佐々木明氏は巨椋鴻之介(おぐらこうのすけ)の名で詰将棋作家としても活躍しました。彼の集大成の作品集。約10年前に出版されたのち、現在では絶版となっています。
皆さまが日頃よりみずたまに付き合ってくださるおかげで、欲しかった詰将棋作品集『禁じられた遊び』を購入できました!いつもありがとうございます。
— みずたま (@go_tom_89) January 13, 2019
本書は第1部「原点と習作」と第2部「禁じられた遊び」に分かれています。後者は盤面全体を使った図式がメインなので、目下のところ第1部を慈しむように楽しんでいます。文学界の人なだけあって文体が格調高く、また作品の合間に語られる昭和の様子にえも言われぬ滋味があります。
【棋譜集】
先日竜王を獲得した棋士による実戦集。以前メイン戦法として指していた四間飛車穴熊の勝局を50局紹介しています。相穴熊と、四間飛車穴熊vs居飛車銀冠の戦いが中心的です。とりわけ相穴熊の戦いは仕掛けの数手が繊細ですが、そのあたりの考え方がよく解説されていて非常に勉強になります。ノーマルな対抗形にも応用できそうです。
本書が刊行された当時は広瀬先生の王位獲得がメイントピックでしたが、竜王を獲得した今、『広瀬流角換わり腰掛け銀勝局集』の出版が待たれますね。
12月の新刊紹介でも触れましたが、王道中の王道を往く康光将棋(当時)の堂々たる指し回しを学ぶために鑑賞しています。21世紀の『中原誠実戦集』といっても過言ではないか・・・?
『藤井聡太全局集』
出版から半年が経ちましたが、最近自分自身が将棋を指す中で、ようやく「29連勝目」の藤井ー増田戦をうまく理解できるようになりました笑
平成31年度版の出版までに全部消化できるだろうか...
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みなさんも将棋の勉強楽しみましょうね!
ではまた。
あきこと学ぶオポジション
どうぶつしょうぎを教えていて気づいたこと。
将棋の導入のために開発されたどうぶつしょうぎですが、小さな子、未就学児にとってはまだ難しいゲームです。
いくら駒が少ないとはいえ、駒を進めるという基本的動作だけでなく、駒を取る、打つというイレギュラー的動作が必ず起きるのが大変なようです。
今こうしてさりげなく言った「駒」「打つ」のような一見簡単な言葉も、子どもにとっては「大人の専門用語」なわけです。
てなわけで、最初の最初は、「ライオンを取る」という最後の動作から教えます。
そのためにやるのが「ライオン一騎打ち」。
双方のきりん、ぞう、ひよこを取り除いてどちらかがライオンを取るまでやります。
もちろん大人の常識から見たら引き分けが結論なのですが、やってみると結構楽しそうにきゃっきゃと盛り上がってくれます。(もちろんオトナはわざとライオンを差し出すことも必要)
最初はトライルールはなしでやりますが、慣れてきたらトライルールを導入。トライとは、ライオンが相手陣4段目に安全に侵入できたら勝ちというもの。(安全にというのは、侵入した直後の手で取られたら負けということ)
どうぶつしょうぎは手頃な盤面編集アプリがないので、今回は偉大なるローソン様のからあげクンしょうぎに協力を仰ぎます。みんなやってね!
さて、このライオン一騎打ち(相手のライオンをとったら勝ち。トライルールあり。)は、先手が必勝になります。
初手は前か横か斜めの3通り。
①斜め
斜めに出ると、相手は横に出てきます(図)。
そこから横に移動すると、相手も一歩横へ追随してきます(図)。
ここからいろいろな手がありますが、これは引き分けになりそうです。この局面、手番が相手ならこちらの勝ちというのがヒント。
②横
初手に横に移動すると、相手は斜めに向かって動いてきます(図)。
この一間(いっけん)を開けて向かい合う形がこのゲームの急所で、この後は互いにミスが出ない限りはこれで先手負け。引き分けと負けの判断は難しいですが、先手で勝てないのは等しく失敗と見てもらってかまいません。
③前
初手前進は、好手で、これで先手勝ち。
言われてみれば簡単ですが、この局面、相手はどちらかの横に動いて先手に道を譲るしかありません。
あとは譲られた道を進めばトライorキャッチ確定。
よく見ればさきほどのこの形、
先程出てきた急所の一間トビの形ですね。
「一間トビで相手が手番ならば自分は道を譲ってもらえる(イコール勝ち)」がこのゲームの基本図式です。
楽しいのでみなさんもぜひやってみてください(Lineでローソンと友達になるだけ!駒の使用制限は設定画面から。)
なお、この一間トビで手番を渡すのはチェスのオポジションという概念と何ら変わりません。興味がある方は調べてみてくださいね
チェスに関するおすすめ書籍は渡辺暁『渡辺暁のチェス講義』です。
12月の新刊
あけましておめでとうございます。
本年もみずたま将棋ブログをよろしくお願いいたします。
2019年を始めるにあたって、昨年12月の主要な新刊をまとめておきましょう。
1.本間博『妙手に俗手、駒余りもあり! 実戦詰め筋事典』(マイナビ)
ありそうでなかった本が出ました。実戦の終盤に頻出する詰み筋を多数収録。
従来の詰将棋作品と異なり、駒あまりや余詰もオッケーという決まりで、ただひたすらに玉の詰み筋を探していきます。
私自身とても参考になりました。
★★★★☆
2.高野秀行、岡部敬史、さくらはな。『将棋「初段になれるかな」会議』(扶桑社新書)
級位者2人がプロと話し合う中で出てきた、級位者が初段になるためのアドバイスをまとめた本。新書サイズで気楽に読むことができる。将棋上達の上で、モチベーターになる本はなかなかないので貴重かもしれない。
★★★☆☆
多少装丁は違うが、『〇〇で勝つための鉄則と心得』シリーズの続編。
細かい手順よりかは大まかな仕掛け~終盤の手の流れを紹介してくれ、三間飛車を指すうえでの指針となる。級位者向けだが、有段者が読んでも参考になるところはあると思う。
★★★☆☆
4長岡裕也『神速! 角換わり▲2五歩型 必勝ガイド』(マイナビ)
ゴリゴリの高段者向け定跡書。この辺の最新変化はYoutuberの方などアマチュアにも詳しい方が多いので、そのへんと比べてみるのも楽しいかもしれない。
★★★★☆
いまでこそ天真爛漫な力戦派というイメージがあるが、少し前までの佐藤先生の将棋は定跡重視で、超がつくほどの王道の将棋であった。本書はそのころの将棋がメイン。君島さんも構成に協力され、資料調査、棋譜解説の両面で大変に手の込んだ仕上がりとなっている。
私自身はそのころの佐藤先生の将棋を見て育ったので、今回こうした棋譜集が出るのは大変うれしく、また実際に並べてみて、筋がいい将棋を再び身につく感覚がしている。
★★★★★★★★★★
6宗時宏『Munetoki宗時宏精選詰将棋100』(Kindle書籍)
詰パラだけでなくツイッターでも活躍されている作家さんの作品集。
レベルは大変高い。それだけでなく、問題紹介に使用されてるのが美しい飴色の駒の写真というのも好印象。レベルは相当高いので、買われる前にサンプルでご確認ください。
★★☆☆☆
7高橋道雄『この局面は詰みがあります どう詰むかな?』(創元社)
実戦詰将棋集。相手の持ち駒を見て詰み筋を選ぶなど、実戦ならではの考え方が勉強になる。級位者向け。
★★☆☆☆
奨励会を年齢制限で退会した青年がふたたび将棋に打ち込むまでの人間模様を描くマンガ。第1巻は人物紹介で終わった感じがあったが、本2巻からは本格的に物語が進んでいく。プロ棋士による研究会に主人公の安住が飛び込んでいく様子はリアリティがあった。本書の将棋監修をされている方の記事があるのでまだの方はぜひ。
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取り上げ漏れがあれば、いつでも教えてください!
雑文
先日、ふらっと三鷹に行ってきた。
何軒かの古本屋を覗いたあと、あまりお目当ての本がないなと思いながら歩いていた商店街に、ふるびたおもちゃ屋さんがあった。
軒先のガチャガチャにアンパンマン先輩の顔が見えたので、硬貨を2枚投入する。最近はガチャガチャは一回500円までという自分ルールを課している。さて、出てきたのはチーズ(犬のキャラ)だった。
「200円でチーズ」はなんだか悔しくて(チーズファンの皆さんごめんなさい)、もう一回やろうかなと財布を弄る。しかしあいにく小銭がない。
千円札はいちおうあったので、そのおもちゃ屋の中に入り両替をしてもらった。気づくと、店主は将棋盤とにらめっこをしていた。手元には見覚えのある構図の一枚の紙。4つの図面に作物が書かれている。
聞けば、70歳前後に見えるその店主は、店番をしながら、将棋世界に毎号掲載される詰将棋を解くのをボケ防止も兼ねた日課にしているとのこと。
前半は4題はすでに解いてあったのだろう、店主はいまは第5番の問題を前にうんうん唸っている。街はクリスマスイブ。雑誌の発売からの3週間で4題という解図のペースに実力のほどがうかがえる。
すこし一緒に検討してみる。初手は竜?桂?でも桂だとあとが続かないからなあ。竜には金を打つんじゃありませんか?などと駒をいじってみる。
何分か経って、玉方の私が受け間違いをしたようで、少し詰みすぎる変化が出たところでどちらともなくお開きとなった。私が帰ろうとすると、爺は藤井聡太七段の詰将棋そして棋譜の良さをしばらく語った。
お邪魔しましたと言ったのち外に出るとなんだか晴れやかな気分がしたのは、お天気のせいだったか。
その日は武蔵境まで歩いた。
サイン本ならブック●フ
最近買った本から。
最近はさすがに毎日1冊ペースではなくなってきています笑
某ブック●フの200円コーナーで見つけたもの。
さすがにノータイムでレジに持っていきました。
谷川先生の王位時代なので揮毫された時代がけっこう絞れそうです。
同じお店に三浦先生のサイン本もあったので1010円で購入。
トーチカ(ミレニアム)囲いは最近リバイバルの傾向にあるので、手元に一冊ほしいところですよね。
別の一般の古本屋さんで見つけたのはこちら(540円)。
谷川先生は字がうまいですね。
おつぎは、郵便振替で購入したもの。
アマゾンでは高値なのですが、若島さん(JCPS)から直接購入できるようです。
内容は、詰将棋パラダイス誌の歴史と詰将棋作家の素顔紹介で、とても面白い読み物。
笑いあり、涙あり(?)の読み物『盤上のパラダイス』は弊社で販売しております。郵便振替でJCPS (00900-9-115694)まで。1200円で送料は当方負担です。 pic.twitter.com/bwKXey7LsQ
— Problem Paradise (@propara) December 4, 2018
サイン本が続いたのでこちらのサインなし本も買っておきました(360円)。
とても懐かしい。
新刊で最近買ったのは、以下の2冊。
DVD付きの棋書は画期的ですよね。
初心者の方に強くお勧めします。
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今日は以上です!
いつから教えられるかな?
今回は将棋普及について考えることをつらつらと。
身の回りに将棋をはじめた初心者がいたら、その人にたくさん負けてあげるのがいちばんの普及になるよという話です。
最近はおとなで将棋を始める、あるいは大人になって久しぶりに将棋を再開するというケースを多く見かけます。もしもあなたが子どもならば学校や道場で友達とひたすら実戦を指すという上達法が有効そうですが、大人になると時間的にも人間関係的にも子どものように元気に、しかも一日に何局も、というのは厳しいですよね。
ところで、将棋を習うといえば、将棋会館や将棋教室でプロの先生の指導を受けるというイメージが強いのではないでしょうか。しかし、実際問題として大人になって将棋を始めた人が、ルールを覚えたくらいでさあ教室へというのはなかなか敷居が高いわけです。ウォーズやぴよ将棋もあるけどどこか味気ない...
やはり、初心者にとっていちばんの障壁はいい対戦相手がいないということなのでしょう。それだけに、もしもあなたの周りに将棋初心者がいたら、優しくしてあげてください。
ここでひとつの文章を紹介します。先崎学九段が将棋世界に連載していた「千駄ヶ谷市場」の中の、1人の上位者が1人の初心者に教えることを説いた「一人一教」の項目より。
(前略)さて、その一部初心者に教えるときに大事な事、それはとにかく負けてあげることである。何番でも何番でも、ただひたすら負け続けるのだ。負けるとナメられるのではないか、と考えることがあるかもしれないが、無用の心配である。例え貴方が級位者だとしても、覚えたての人間にとって級位者というレベルは神様のようなもので、わざと負けてくれるのが分かれば分かるほど、貴方のことを尊敬するのである。高度な具術を持った人間ほど、初心者に優しくできるということを知っているからだ。
相手が「取り」を賭けたら決して逃げずに、歩をタラしてきたら絶対に受けずに、最後は詰む方向に玉を逃げ、それを何番も繰り返す......。
とても重要な指摘だと思います。
最近は級位者の方が初心者に教えるケースもまま目にしますが、そうした場あいても「負けるとナメられるのではないか」という精神は捨てたほうがいいのかもしれません(私はまだ捨てきれていませんが笑)。先日紹介した「【8枚、10枚落ち】こどもに負けよう」という記事とも関連するのですが、初心者にたいしてぼろ負けしては拍子抜けされるのでは、飽きられるのではと(無意識にであれ)考えた結果、たとえば10枚落ちの上手玉が上段に逃げ出したとすると、下手にとっては将棋というゲームがひどく難しいものに思えてしまいます。
初心者は級位者を尊敬していますから、安心してぼろ負けしてください。
そして本記事のタイトルへの答えとしては、なにかひとつでも教えられること(歩の使い方でも、駒の並べ方でも)があれば、もう初心者に教える側に回れると思います。
技術的にわからないことをまた別の人に聞いたり一緒に研究するのもまた楽しいですしね。