みずたま将棋ブログ

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【棋書】悪手に学ぶ上達法

皆さんは、棋書という言葉を聞いてどんな本をイメージしますか。

 

ひとによってそれは定跡書であったり、詰将棋の本であったり、もちろん棋士の実戦集ということもあるでしょう。

 

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こんなのとか、

 

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こんなのとか。

 

私の数少ない経験から言って、少なくとも日本における将棋の本においては、ある局面における正しい手を導き出すトレーニングという面が重視されているように感じます。

 

つまり、詰将棋本ならば、(読みのトレーニングという面もあるが)この局面で相手の玉を正確に詰ませるようになりましょう。定跡書ならば、ここでの最善の一手はこれです。他に有力なこの手は相手にこうやられると実はあまり良くならないんですよ、だから最善手を選びましょうといった感じ。

 

言い換えれば、局面が無の、あるいは凪の状態からスキルを駆使して局面を良くしていくこと。

 

しかし実戦ではそうは言っていられません。実際問題として、特にアマチュアの対局においてはどちらかのミスによって形勢や勝負が決まることがほとんどです。

また、そのミスも1局で1回とは限らず、ツイッター上に上がる局面などを見ていると、ミスにミスで応戦している場合もちらほら。

 

かりに自分と相手がどちらも50パーセントずつのミスの可能性を分け合っているとしても、2局のうち1局は「ミスからの立て直し」という発想が必要になってきます。

そして2局のうち残りのもう1局は、「相手のミスを咎める」という技術です。

 

こうした、不完全性にもとづく指導は、すくなくとも棋書におけるアプローチとしては極めて軽視されているように思います。

 

羽生先生はその著書『上達するヒント』のなかで、指摘しています。

 

これまでたくさんの数の将棋の本が出版されてきましたが、それが実際の対戦でどれくらい役に立っているのかと思ってきました。

 つまり、本に書かれているのは美しく技が決まる場面ばかりで、それ以外の場面についてはあまり書かれていないのです。

 ゴルフに例えるなら、ドライバーショットについては書かれているが、バンカーショットは無視されている感じです。将棋は、ゴルフ以上にバンカーの多いゲームです。そこからどのように抜け出すかがとても重要で、棋力の多くの部分をこれが占めている気がしています。(後略)

羽生善治『上達するヒント』まえがき)

 

この点について私は、日本で出版される囲碁の棋書も同じような感覚を持っています。

創元社などから翻訳されている韓国の棋書は結構リアリストな本がある印象です。)

 

 

さて、それを踏まえて棋書紹介。

 

1.アマの将棋ここが悪い!シリーズ創元社

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主要な定跡手順や実戦の局面から、アマチュアが指しがちなミスを次の一手形式で指摘。正解の本筋の手と合わせて参考にしたい考え方が満載。

「序・中盤の急所」から「居飛車穴熊戦法」まで6冊すべてが電子書籍化されている。

 

2.高橋道雄『将棋の序盤でやってはいけない手』創元社

 

将棋に勝利の方程式があるとすれば、「高橋道雄+創元社=ぜったいに勉強になる」です。『強くなる初段虎の巻』なんかもいいですね。れ以上の紹介はすべて蛇足なのですが、いちおうひとつだけ。

 

 

3.武者野勝巳『将棋実力初段検定』マイナビ

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初段を目指す人向けの次の一手集です。おもしろいのは、当時の読者モニターに協力を仰いで、正答率や級位者の実力のバロメーター、ありがちな間違いなどもフィードバックしていた点。

30年近く前なのでいまの初段よりかはレベルが高いかと思います。

 

4.阿部隆『阿部隆の良い手悪い手普通の手』マイナビ

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NHKの将棋講座の内容をまとめた本ですが、けっこうレベルが高いです。

大局観を主題にした本で、正解手や凡手のほか、悪手となぜそれが悪い手なのかをちゃんと説明してあるのが画期的。いまでは絶版なのが残念です。

 

5.米長邦雄『逆転のテクニック』マイナビ

 

人間は必ずミスをする。大山康晴先生やこの米長先生に代表されるような、昭和の将棋界に色濃く見られた思想です。