みずたま将棋ブログ

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昭和が遺した棋書【3選】

平成がそろそろ終わりますね。

 

私は平成の初期に生まれて、小学生のころ将棋を始めました。平成生まれとはいえ、棋書や棋譜など、将棋上達のうえでのメソッドは昭和までに生まれ、確立したものでした。その点、最近の若者たちを見ているとソフトでの序中盤研究に余念がなく、平成の上達メソッドを謳歌しているなと感じます。令和のこどもたちはどんな将棋を指すようになるのでしょうか。

 

今回は昭和と平成が生んだ将棋の名著を個人的な視点で選び、3冊づつ簡単に紹介します。(出版年が平成か昭和かというくくりでなく、執筆した棋士の活躍した年代でまとめることにします)

 

【昭和編】

(1)「大山康晴全集」

(2)米長邦雄「米長の将棋」

(3)熊谷達人「将棋次の一手

 

 

【昭和編】

(1)「大山康晴全集」

伝説の大名人が遺した棋譜集。初期のころは居飛車での戦いが目立ちますが、壮年期から本格的に採用した振り飛車はいまでも最高級の勉強材料として多くの振り飛車党の助けとなっています。大山将棋についてはエッセイ・技術書ともに副得本が多いですが、やはりそのいずれをも差し置いて、一次文献としての本書が語るものの大きさに圧倒されます。つい最近プレミアムブックスとして復刊されたので、未読の方はぜひご検討ください。

大山康晴全集 プレミアムブックス版|将棋情報局

 

大山将棋は、有利になってからの余し方が好きです。

図は大山先生の後手。

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島弘光ー大山(1972王座)

▲5三歩以下、 △6二金左 ▲3一龍 △4三飛 ▲3五角 △4六歩
▲5二歩成 △同 銀 ▲7五歩 △5七歩成 ▲7四歩 △同 銀
▲5七金 △5三歩

 

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(2)「米長の将棋」シリーズ

1980年ころに平凡社から出版されたこのシリーズは、米長邦雄永世棋聖が指した棋譜を戦型ごとに分類し、自戦記形式で解説した実戦集です。おもに中盤の仕掛けのあたりから終盤の入り口までを、自身の読み筋や棋理を交えながらわかりやすく説明しています。

私自身、指導者に言われた「駒がぶつかる(仕掛けの)局面はしっかり読まないといけないよ」ということばをテーマにしていたので、マイナビさんから本シリーズが復刊されたときは重宝して読んだ記憶があります。

 

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第3巻第17型より

▲2二歩以下、 △7七歩 ▲同 桂 △7四歩 ▲8六歩 △7五歩
▲8七銀 △7四銀 ▲2一歩成 △6三玉 ▲3一と △3五飛
▲同 桂 △7六銀

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再現性のある情報を提供するということが棋書の最大の役目であるとすれば、優勢の将棋を勝ち切る技術はその最大の魅力のひとつであるといえそうです(もう一つは初形の局面から優勢を作り出すこと)。米長先生の将棋というと泥沼流の逆転術というイメージが強いですが、そうした技術はむしろプロとしてはできて当たり前でしょうという表現をされていることが多い気がします。本局面の手順をいい例として、本書では、こうした優勢から勝ちへという流れが一本の糸のように表現されているところに出合うことができるでしょう。

 

(3)熊谷達人「将棋 次の一手 実戦の手ほどき」(弘文社)

1979年に出版された本書については少々説明が必要でしょうが、このツイートで代用させていただきます。

 

みずたま on Twitter: "『将棋次の一手』熊谷達人
1984年発行。終盤の妙手を探す問題が前半を占めるが、これは2011年に文庫化済み(終盤の鬼手)。本書の醍醐味は後半部「実戦の手ほどき」で、プロの実戦を題材として仕掛け周辺の好手を戦型別に約140例紹介してある。知らない手筋が多く驚いた。

#今日の棋書… https://t.co/wI3KDmCp8T"

 

出版当時のプロ棋戦で出てきた手を解説する「実戦の手ほどき」では、派手な手こそ出てこないものの、プロの実力と読みに裏打ちされた味のある一手が集められており、玄人好みの手筋集となっています。

 

たとえば実戦の手ほどき「居飛車編 第12題」から。

単に▲7四歩△同飛▲7六歩では先手不満です。

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原田ー広津戦(順位戦B1)

△8四飛以下、 ▲2四歩 △同 歩 ▲2五歩 △同 歩 ▲7四歩
△同 飛 ▲2四歩 △2六歩 ▲同 飛 △4四角 ▲2八飛
△2二歩 ▲7六歩と進行。

 

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2筋をへこませて、先手不満ない進行となりました。

 

この本は絶版になってしまっているのですが、街で見かけた際はぜひ手に入れてあげてくださいね。

 

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次回は平成編をやろうと思います。