みずたま将棋ブログ

みずたま(@go_tom_89)のブログです

コンピューターの最善手と人間的な正解

最近は自分が指した将棋をコンピューターに解析してもらって反省するようにしています。コンピューターの読み筋と自分の考えを比べると同じ局面でもまったく異なったとらえ方をしていることがわかり興味深いです。こう書くとコンピューターによる分析が万能に思えるかもしれませんが、読み筋の中には文字通り人間離れした指し手があったりします。そういった奇抜な最善手を指せないかぎりは不利になってしまう可能性もあるという意味では、ソフトの指し示す手を使うときはその裏にある意図を理解する必要があるのかもしれません。今回はそんなお話。

 

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上の図は、Twitterに載せた次の一手問題です。よければ少し考えてみてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

正解は、▲22歩成と成り捨てる手。

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△同金には▲32角という技を用意しています(角を取れば飛が取れる)。

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これは問題なく先手有利でしょう。問題は最初の歩成を飛で取られたとき。

 

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以下▲同飛成△同金までは進みます。これが今回のテーマ図になります。

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教科書的に言えば、飛車交換をした後手陣は飛の打ち込みに弱く、その反面先手陣は比較的堅いので、駒の損得はないながら先手有利で打ち切られてしまうでしょう。

ソフトもここでは先手に1500点ほど振れた評価値を出し、▲31飛と打つ手を推奨しています。今回の文脈でいうと、この▲31飛がコンピューター的な正解です。高段者のかたにとってもこの手が正解といっていいと思います。

 

とはいえ、級位者だと▲31飛と打ち込んだ後に△21飛と合わされるような手は気になるのではないでしょうか。

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大会などで相手が自信満々の手つきでこの飛を打ってきたら、まずは素直に取る手から考えてしまいそうです。図から▲21同飛成△同金▲41飛△31飛で次図。

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さきほどの飛の合わせを取った手前、ここでも▲31同飛成と取るくらいですが、自然に後手陣に飛の打ち込みがほとんどなくなってしまいました。なにより、盤上で後手だけが金を動かしているのがシャクにさわります。

 

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ここからひとつのことがわかります。つまり、攻めにかけた手は(飛打ちに対する飛合わせ、打ち込んだ駒を取る手などによって)盤上から消えて無駄手になる可能性があるということです。

(もちろん先ほどの課題図で、強い人であれば▲31飛△21飛▲81角△62玉▲63角成△同金▲21飛成△同金▲41飛のような手順を思い描いて先手よしとすることと思います。これはこれで正解でしょう。)

 

このように、(コンピュータ的な、あるいは高段者的な)深い読みを前提とする形勢判断、難しい手筋を要求される攻め方はリスキーということを覚えておいていただければと思います(もちろんリスキーだから悪いということではないのですが)。

 

大会のような結果が求められる局面では、▲68金右のような、「戦いが一段落したところでじっと自陣のスキをなくす手」が勝率アップにつながることが多々あります。いわゆる手を渡すという技術ですね。このような手は、深く読まずとも指せることも魅力的です(必死に最善を読む努力もまた必要)。

 

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手元のソフトの評価値的には1000点くらいで先手よしです。この1000点という評価値も、後手のひとがこれに対する△81飛というド辛抱が指せればこそで、△29飛のように攻め合うと▲31飛くらいで一気に後手が苦しくなります。

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おたがいに飛を打ち込み合った上図を見れば、さきほどの急いで打った飛との働きの差が歴然とするでしょう。後手の持ち駒に飛がないので先手の飛車の価値が相対的に高まっています。これは実戦的にも先手相当勝ちやすいはずです。

 

さきほどの法則を補足すると、攻めにかけた手が盤上から消える可能性があるのに反して、守りにかけた手が無駄になることはまずないということです。考えてみれば、相手が攻めてくるときはかならず自分のつくった守り(囲い)を相手にすることになるので、このことは自然に理解できるでしょう。ただし、このようなじっと守りに手をかける手は持ち駒が豊富だったり、玉がある程度堅かったりと、のちに攻めのチャンスが確実に回ってくる場合ほど有効です。一手を争う急戦などでは緩手になりやすいので要注意です。(それから、全駒しそうな勝勢の時にこれをやると白星を得られても友人を失います笑)

 

最初の図を再掲します。

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ここで、必ず無駄にならない手で攻めるという意識ならば、▲45桂という手が主題に沿った手です。

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先手にとって37桂と58金の2枚が浮き駒なので、そのうちの1枚を軽くさばくという感覚です。これで相手に手を渡し、△28飛なら手順に▲68金右と守るし、△81飛の鬼辛抱ならまた▲68金右と手を渡し返すのが実戦的でしょうか。△28角には▲27飛の両取りがあります。

 

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攻めの筋としては▲95歩△同歩▲同香△同香▲92飛(図)のような筋があり、一歩的に飛を手放してしまった後手は思うように戦えないと思います。

 

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ということで実戦的に勝率を高める考え方を紹介しました。

思いつくままに書いたのでわかりづらいところがあったらお気軽にコメントください。