9・10月の新刊
お久しぶりです。今日は職団戦に行ってきました。需要あればまた記事にします。
さて今日も元気に新刊紹介していきましょうね。
まずはマイナビの戦術書から。その後その他の出版社のものを紹介します。
★★★★★☆
NHK杯でも指されるなど今年に入って頻繁に目にする機会が増えた超攻撃型三間飛車。
本書で扱う三間飛車藤井システムは、従来の四間飛車藤井システムよりも居飛車急戦に強く、また展開によっては居飛車の雁木のような変化にも移行する柔軟性を持っている。本書はアマチュアにも好まれるいわゆるトマホークの研究も収録し、充実の300ページとなっている。
(2)長沼洋『「駒取り坊主」長沼の中・終盤で差をつける 力戦次の一手205』
★★★★☆
プロの実戦をもとに、定跡を外れた局面でのセンスを問う次の一手本。
駒が入り組んだ中終盤の局面にたくさん触れることで考える力が身につくだろう。
友人の対局の感想戦にいきなりまじる感覚を味わえる。初段~高段者向け。
(3)武市三郎・美馬和夫『奇襲の王様 筋違い角のすべて』
★★★★★
久しぶりに出た筋違い角本。振り飛車編・居飛車編はもちろんのこと、相筋違い角なる戦型も解説した、筋違い角の完全版。武市先生の語りを美馬さんがガイドするという構成で、いつもながら美馬さんの構成と文章は非常に読みやすい。
後半の実戦編では目からうろこの考え方・大局観が多く紹介されていました。
(4)杉本昌隆『将棋・究極の勝ち方 入玉の極意』
★★★★☆
これまた久しぶりに出た入玉本。絶対手筋シリーズの続編のような位置づけで、見開き2ページで一つの入玉手筋を紹介する。
小駒を4枚投入しても大駒1枚を回収できれば1点の得、のようなシビアな考えのもと、すこしでも逆転の(あるいは入玉勝ちの)チャンスを広げる知識を手に入れる。
実戦には出てこないだろうなあ...とは思いつつもこれだけの知識が1663円で読めるなら安いものです。
(5)増田康宏『増田康宏の新・将棋観 堅さからバランスへ』
★★★★☆
増田先生2冊目の出版は自戦解説本。将棋記者の内田晶さんの構成の下、最近増田先生の指した12局の将棋を各20ページかけて詳説。かつての名著『絶対感覚シリーズ』に似たイメージか?
章立ては雁木、角換わり、相掛かり、振り飛車の4つ。堅さよりバランス重視の陣立てで将棋盤全体をコントロールする思想は、ポスト穴熊時代の嚆矢となるだろう。
「雁木の理想的な成功例」(斎藤慎戦)「完璧な振り穴攻略」(青嶋戦)など、完璧に勝ち切る将棋も多い。
(6)西尾明『コンピュータは将棋をどう変えたか?』
★★★★★
まさに労作。労作オブザイヤー。コンピューター将棋の出現でプロの将棋がどのように変わったかを、プロ棋戦及びフラッドゲートの豊富な実戦例を交えて詳説する300ページ。
第1章(「コンピュータ将棋が定跡に与えた影響」)で名人戦・森内ponanza新手や矢倉△4五歩作戦などここ5~10年で人間の将棋界でおこった革命を説明。その後の第2章(「コンピュータ将棋が作り出す新戦法」)これから人間が直面することになる(角換わり▲4八金型などに関してはすでに直面している)新スタイルを紹介する。
メインとして相居飛車を扱っており、スタイルとしては勝又先生の『最新戦法の話』(浅川書房)の現代版といた趣き。
将棋が別ゲームに見えてくる。
★★☆☆☆
大棋士・谷川浩司九段の将棋の中から、矢倉の名局20局を自戦解説したコレクター向き実戦集。巻頭に「私的矢倉観」と銘打った講座を設けているが、これは「名局集シリーズ」の巻頭特集と似たイメージのつくり。
ただし、内容的には『谷川全集』や『光速の寄せ』で読んだことがある内容であること、最近では指されないじっくりとした矢倉のみを扱っている点で個人的需要は低いかもしれない。
(8)『藤井聡太推薦! 将棋が強くなる基本3手詰』
藤井聡太七段推薦の3手詰本。問題作成は詰将棋の大家・柳田明氏で、クオリティはお墨付き。
ぱっと読んだ感じ、各問題ごとにひとつ詰め手筋を身につける意識が強い感じがする。
芸術性重視のハンドブックシリーズとはやや毛色が違い、実戦・現実的な感じを受ける。
(9)船江恒平『船江流「詰み」から逆算する終盤術』
★★★★☆
NHK将棋講座の内容をまとめたテキスト。「詰み」「詰めろ」「2手すき」「必死」といった終盤の基本的な考え方を、部分図を多用して解説する。タイトルの通り、詰みの状態から1手ずつ局面をもどして考えていく構成。
内容として初級者が基礎を押さえるための教科書といった趣きだが、いつの時代にもあってよいものだろう。
★★★★★
気鋭の若手詰将棋作家による作品集。電子版のみの出版なものの、540円と格安。
7手から17手までの手ごろな詰将棋を100問収録しており、頭の体操にピッタリ。
勝浦先生の詰将棋道場くらいの感覚で取り組んでみるのがいいかと思う。
盤面デザインがいいのも好印象。
(11)森信雄『詰ます将棋』(実業之日本社)
★★☆☆☆
すごい問題集が出たものです笑
詰将棋は基本的なルールとして、玉方(詰まされるほう)が盤上・攻め方の駒以外のすべての駒を持つことになっています。しかしこの「詰ます将棋」では、玉方が持ち駒「なし」「歩のみ」など制約がある状態で始まります。
なので持ち駒なしの玉方(11玉、21歩)に対して▲1三龍と王手すると詰みなのです笑笑
楽しいので息抜きにいいかもしれませんね。
以上のほか、島朗『純粋なるもの』(河出新書)や渡辺明『頭脳勝負』(ちくま文庫)も新書化・文庫化されています。いずれも名著なので未読の方はぜひ。前者は森内・佐藤・羽生らが若かりし頃のエッセイ集、後者は将棋界の仕組みをわかりやすく解説。
鍋倉夫『リボーンの棋士(1)』は年齢制限で奨励会を退会した青年の復活を描く王道もの。ストーリーがありがちなだけに今後が楽しみです。
加藤一二三『ひふみんのワクワク子ども詰め将棋【1手詰め+3手詰め】』
子供向けの詰将棋本でも結構骨のある図が載っています笑
これをいい機会に、1手から5手詰をマスターしよう。
1069円で220問あるので1問5円以下とコスパよし。
ここだけの話、子供向けの本は実は大人のためになることも多いです。
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9,10月の新刊紹介をまとめてやってみました。
紹介漏れがあったらお知らせください☆